【乱読NO.1225】「小泉政権 「パトスの首相」は何を変えたのか」内山融(著)(中公新書) | D.GRAY-MANの趣味ブログ

D.GRAY-MANの趣味ブログ

ココチよさって私らしく暮らすこと ~読書と音楽と映画と・・・Plain Living and High Thinking~

 

イメージ 1

 

[ 内容 ]
21世紀最初の4月、世論を背景に首相に就いた小泉純一郎。
靖国参拝、北朝鮮訪問、郵政解散など、政権の5年5ヵ月は、受動的イメージだった日本の首相を、強いリーダーシップを発揮し得る存在に変えた。
一方で、政権は「抵抗勢力」=派閥・族議員、官僚と対峙する上で、世論を頼みとし、人々の理性より情念に訴え続ける。
新自由主義的政策を強く進めた内政、混迷を深めた外交を精緻に追い、政権の功罪と歴史的意義を記す。

[ 目次 ]
第1章 小泉純一郎の政治運営(ポピュリスト的手法と「パトスの首相」 トップダウン型政策決定と「強い首相」 ほか)
第2章 内政―新自由主義的改革をめぐる攻防(経済財政諮問会議の機能 財政改革―予算編成プロセスの変化 ほか)
第3章 外交―近づく米国、遠ざかる東アジア(外務省の混乱―田中眞紀子外相と鈴木宗男 対米協力の強化―自衛隊の海外派遣 ほか)
第4章 歴史的・理論的視座からの小泉政権(戦後政治史のなかの小泉政権 首相のリーダーシップと制度)
第5章 小泉政権が遺したもの(「強い首相」の功罪 「パトスの首相」の功罪 ほか)

[ 問題提起 ]
タイトル通り小泉政権を分析した本。

小泉政権を分析した本に同じ中公新書に竹中治堅『首相支配』がありますが、あちらが制度面から小泉首相の強さにせまったのに対して、こちらの本はもうちょっと総合的に小泉政権を評価しようとしています。

[ 結論 ]
小泉政権のやったことと、今までの政権の違いといったことが内政・外交にわたりまとめて書いてあって、小泉政権の業績を振り返るのにはいい本です。

また、小泉首相の強みとして他の自民党の有力者と違い、「時間軸の違い」をあげているのもその通りだとお思います。

この「時間軸」とは、他の自民党の有力者が将来の自分の影響力を保持するために、長期的に他の議員や官僚と良好な関係を築こうとする中、小泉首相は退陣時期を明言し、他者と貸し借りの関係をつくろうとしなかったことで、今までにはできなかった思い切った改革ができたというもので、これは確かに小泉首相の「強さ」だったと思います。

ただ、副題にある「パトスの首相」という捉え方は少し平面的な気がしますし、外交面の戦略の欠如という指摘も、基本的に新聞の社説レベルを超えるものではありません。

歴代自民党政権との比較に関しても、あまりに範囲を広げすぎていまいち鋭さはないです。

[ コメント ]
個人的には同じく改革を掲げて、小泉首相と同じく国民的な支持を受けて誕生しながら失速した橋本政権との比較といったものを詳しくやってもらいたかったです。

[ 読了した日 ]
2008年12月17日