今回はロシア少女戦士シリーズの第4回目になります。

 本文を始める前に当時のソ連軍の少女兵達のユニフォームを少しご紹介したいと思います。

参考画像をご覧下さい。

服装は当時のソ連軍お馴染みのカーキ色の軍服です。

今回は従軍した大多数のロシア女子が所属していたソビエト陸軍の軍装になります。

略帽に上衣に幅広パンツかスカートに黒いロングブーツというスタイルです。

女子も男子の制服とほぼ同じでした。

スカートを履く場面もあったようですが、司令部での事務や後方勤務の場合に限られていたのかもしれません。

女子ナンバー2狙撃手のクラウディアさんは、前線での勤務は殆どパンツ(ズボン)履きっぱなしだったと答えています。

やはり前線など戦闘区域では森や沼地や塹壕など、かなり汚れる環境でしたからスカートでは無理だったようです。

それでも、彼女達は兵舎にいる時やオフの時は女性らしくスカートを着用していたようです。

当時の様子を女子飛行連隊の隊員が証言していました。

1941年の独ソ戦開始の頃は女性兵士の従軍が始まったばかりでしたから、

服装にはかなり苦労されたようです。

なぜなら、当局が用意した女子用軍装は男子用だったからです。

航空隊員は女子の中ではエリートで、多少は優遇されていたと思いますが、

それでもダブダブの上着にサイズの大きなブーツには新聞紙を詰めて脱げないようにしたとか。

また裁縫の得意な女子がサイズを詰めて何とか着こなしたと証言していました。

第2回で取り上げたジバ・ガニエワさんの写真を見ると、

きゃしゃでスリムな彼女の体に合ったサイズの軍服にブーツ姿でしたので

女子の従軍が増大するにしたがって女子用サイズの服やブーツが支給されるようになったのかもしれません。

カーキ色の軍服は戦地で多少汚れても目立つこともなく、悪路の多いロシアではブーツは必須だった事でしょう。

膝丈のロングブーツは軟らかい素材のなめし革製で、サイドファスナーなどは無く足にスポッと収まるタイプでした。

男子もそうですが女子もブーツを履くときには白い布を素足に巻いていたようです。

幅広のパンツにブーツ姿ですと、遠目に見て男性兵士と思われていた事もあったでしょう。

戦場での凛々しい彼女達なのです。

また、狙撃兵は作戦中は迷彩服の上下、冬にはオーバーコートも着用しました。

真冬の雪中では内側に毛のついた防寒用ブーツを履いていました。

      パンツ姿の女子狙撃兵                        こちらは戦場では珍しいスカート姿の狙撃兵です。

 

                コスプレ画像から拝借致しました。ロシア女子兵士の一般的なパンツ&ブーツスタイルです。

 

さて、今回登場するのは女子狙撃兵のナタリア・コフショワさんとマリア・ポリバノワさんです。

ナタリアさんは1920年11月26日、南ウラル内戦に参加した労働者の家庭に生まれました。

またマリアさんは1922年10月24日にトゥーラ州で生まれました。

この2人が出会うのは1942年1月の事です。

お二人共に高校を卒業すると狙撃兵学校に入り狙撃の基礎を学びます。

そしてナタリアさんは1941年10月に志願兵として西部・北西戦線に於いて第528ライフル連隊の狙撃手として配属されました。

マリアさんが戦地に赴いたのは1942年1月でした。

配属先はナタリアさんと同じ第528ライフル連隊でした。

狙撃学校を卒業したナタリアさんとマリアさんは、配属後の最初の頃は新人の志願兵女子に狙撃を教えていたようです。

 

そして1942年2月、ナタリアとマリアは連隊と共に前線に到着し、積極的に狙撃に従事しました。

ナタリアが母親に宛てた手紙にこう書いてあります。

「わたしはむしろ戦闘に早く参加したいの!わたし達が前線に行けば、すぐにナチスどもと対峙すると思うわ。」

「憎いナチスどもを大勢撃ち殺す事が本当に楽しみなの!」

ナタリアは新聞などでドイツ軍による残虐な行為を見て彼らを心底憎み、

奴らを自分の手で皆殺しにしてやりたいと思っていました。

その機会がやっと巡ってきたのです。

そして、彼女の良きパートナーは優秀な狙撃手のマリアだったのです。

2月21日~22日 ノバヤルッサ村の戦闘で彼女達はその実力を遺憾なく発揮します。

 

「わたし達の初任務は、森に潜むドイツ兵を始末することでした。」

「もう何人もわたし達の仲間が奴らに殺されていたんです。」

 

「マーシャ、ナチどもをやっつけに行くわよ。」

「奴らは、虫けらだわ。」

「だからこれは駆除よ、駆除!」

「わたし達は正義の味方なの。」

「そしてナチを踏み殺すのはこのわたし!」

「そして、わたし達よ。」

森に“狩り”に出かけた2人でした。

 

「今からわたし達の連隊の前進を邪魔するドイツ兵どもを駆除してやるんだから!」

「マーシャ、奴らは木の上で偽装しているわ。」

「1人づつ始末していくわよ、いいわね!」

「分かったわ!」

「ナターリャ、まず1人目はあそこよ。」

「上手く隠れたつもりかしら?」

「わたし達からは逃れられないって事、」

「教えてやるわ!」

「それっ!」

“バシュン!”

“アァ~!”

“バサッ!”

「やったね!」

「一匹仕留めたわ!」

「最高の気分かも!」

「わたし、ナチスなんて大っ嫌いなの。」

「皆殺しにしてやるんだから。」

 

「次のわたしの獲物、どこかしら?」

「今度は、あそこよ。」

「それじゃあ、いくわよナチスめ!」

「思い知るがいいわ!」

「それっ!」

“バシュン!”

“ウッ!”

“バサッ!”

「やったわ!」

「なんか、わたしの中でジンジンしてきちゃう!」

「わたし、ナチを撃ち殺す度に無上の喜びを感じちゃうわ。」

「この感覚、爽快感、高揚感がたまらない!」

「マーシャ、今度はあなたが撃ち殺してやりなよ!」

「じゃあ、今度はわたしが・・。」

「あそこよ、マーシャ。」

「動かないでね。」

「覚悟しなさい!」

「えいっ!」

“バシュン!”

“ウッ!”

“バサッ!”

「やったね、わたし!」

「ホントだ、面白い!」

「じゃあ、次はわたしの番よ。」

「どこにいるかなァ?」

 

「こんな具合に次々とナチスどもを仕留めていったわたし達。」

「マーシャ、わたし達、何人撃ち殺したかしら?」

「ナターリャ、11人よ。」

「アラッ、初戦はこんなものかしら。」

こうしてナタリアとマリアは初めての実戦でドイツ軍狙撃兵を11人撃ち殺しました。

ナタリアの母への手紙です。

「わたし達は今、最前線にいます。そしてたった3日の間にわたしとマーシャで大勢のドイツ兵を撃ち殺しました。」

「本当にわたしは嬉しい!」

 

そして、その後2人はルチェヴァ村での戦闘で教会の鐘楼に陣取るドイツ軍機関銃座と、

迫撃砲陣地を排除することを命じられます。

「マーシャ、まずは鐘楼の奴らを片付けるわよ。」

「機関銃手と装填手の2人ね。」

「まずは機銃手からよ。」

「いいこと、見てなさい!」

「それっ!」

“バシュン!”

“ウゥ~~!”

“バサッ!”

「アイツ、転落しちゃったわ、うっふふ!」

「アンタも逃がさないわよ。」

「それっ!」

“バシュン!”

「命中!」

 

「今度は迫撃砲の連中を殺らなきゃ。」

「あそこからなら、楽に狙えそうだわ。」

「分かったわ、マーシャ。」

「教会のそばに陣取るドイツ兵どもめ、」

「わたしの正義の銃弾を、受け止めるがいいわ!」

「それっ!」

“バシュン!”

“バシュン!”

“バシュン!”

「やったね!」

「全滅よ!」

「今日もわたし達は、邪魔なナチスどもを駆除してやったの。」

そしてナタリア達はこの村での戦闘で重傷を負った大隊司令官のイワノフ上級中尉を激しい戦闘の中から助け出しました。

この勇敢な少女達の働きにより連隊は進軍し、彼女たちは司令部から表彰されたのです。

こうしてナタリアとマリアは日を追うごとにその狙撃が正確さを増し、多くのドイツ兵を仕留めスコアを伸ばしていったのです。

 

1942年3月初旬、ベクリシュ村での戦闘です。

「マーシャ、今日のわたし達の任務は、敵の機関銃陣地を潰すことだよ。」

「今日も、楽しみましょ!ナターリャ。」

 

「村の中心部に奴らの機関銃陣地がありました。」

「彼らの陣地の周囲には7~8名のドイツ兵が戦闘隊形を組んでいました。」

「わたし達は400mほど離れた位置に陣取り、奴らを狙い撃ちにすることにしたのです。」

 

「いるいる、ナチどもめ。」

「まずは、左右のナチスから駆除するわよ。」

「わたしは右側、マーシャは左側よ。」

「それっ!」

“バシュン!”

“バシュン!”

「あいつ等、混乱してる。」

「今だわ、」

「それ、追加よ。」

“バシュン!”

“バシュン!”

「アッハッハッ、やったね!」

「ホラッ、逃げんじゃねェよ!」

“バシュン!”

“バシュン!”

「ナターリャ、わたしも2人殺しちゃったわ。」

「やったね、えっへっへ。」

「そろそろ、移動しなくちゃ。」

「ポジションを変えて、機関銃を片付けるわよ。」

「わたし達は2人で8人のドイツ兵を撃ち殺しました。」

「これ、ホント楽しめたわ。」

「わたし達はあらかじめ決めておいた次の場所に移動しました。」

「ここって、絶好の場所よねェ。」

「あと、4人だわ。」

「2人づつ、始末するわよマーシャ。」

「それっ!」

“バシュン!”

“バシュン!”

「やったァ!」

「あっという間に終わっちゃった。」

「ヨシッ!」

「わたし達は村に陣取るドイツ軍機関銃小隊を壊滅させました。」

「これでわたし達が駆除したナチスは全部で200人を超えていました。」

「わたし達の前にあるのは常にわたし達の勝利なんです。」

「わたし達はナチスを殺す度に、その快感に酔いしれたのです。」

そしてナタリアとマリアはこの村での戦闘中にドイツ軍の砲撃によって重傷を負った

連隊指揮官のドヴナー少佐を前線から救い出しました。

そして再び前線に戻ったナタリア自身も砲撃の破片を浴びて負傷してしまいます。

ナタリアが負傷した2日後にはマリアも負傷して病院に搬送される事となりました。

病院でしばらくの入院生活を送った彼女達の友情は、ますます強くなっていったのです。

 

戦地での生活は大変なものでしたが、ナタリアは明るく振る舞い、家族や友人に手紙を書きました。

手紙には、彼女の個人的な感情や祖国のへの思い、親族に対する不安などが書かれていました。

彼女の手紙は誠実で楽観的で、ナチスへの憎しみでいっぱいでした。

 

1942年8月14日、ストキ村で、彼女達にとっての最後の壮絶な闘いが始まります。

ドイツ軍は失った陣地を取り戻そうと本格的な反撃を開始しました。

敵の砲撃が続き、彼女達の陣営にも1300発以上の砲弾が降り注ぎました。

そんな中、ナタリアとマリアの部隊は敵の防衛網を突破する任務を与えられていました。

すでに戦いは2日目に突入していました。

激しい砲撃の後、ドイツ軍は歩兵部隊を前進させてきたのです。

すべての生き物が消滅したと思っていた敵。

しかし、ソ連軍の兵士たちは、しっかりと耐えていました。

もちろん、ナタリアとマリアも健在でした。

 

「敵が進撃してくるわ。」

「いよいよわたし達の出番だわ。」

「今度はわたし達が相手よ。」

「わたし達の守備ラインに敵が接近してきました。」

 

「いるいる、大勢いるわ。」

「奴らはわたし達が全滅したと思ってるのかしら?」

「あんなに、無防備な状態で歩いてくるわ。」

「試しに2、3人撃ち殺してやれば分かるかしら?マーシャ。」

「やっちゃおうよ、ナターリャ。」

「それっ!」

“バシュン!”

“バシュン!”

「ホラッ、くたばれっつ~の!」

“バシュン!”

“バシュン!”

「わたしも、!」

“バシュン!”

“バシュン!”

「やったね~!」

「マーシャ、やるじゃん!」

「わたしにも、もっと殺させてよねェ!」

“バシュン!”

“バシュン!”

「隠れてんじゃねェよ!」

「ほらっ!」

“バシュン!”

“バシュン!”

「面白いように、バタバタとわたし達に撃ち殺されていくドイツ兵どもだったわ。」

「いい気味!」

「ざまあ見ろ!」

「わずか数時間の間に、わたしとマーシャで撃ち殺したドイツ兵は40人だったわ。」

「フゥ~、やっと一段落したわね、マーシャ。」

「ホントよねえ。」

「奴ら、これだけ殺しても諦めないかも。」

「上等よ!」

「やってやろうじゃない!」

 

「ドイツ軍部隊は森の端にある窪地に身を潜めていました。」

「やがて彼らはわたし達を包囲し、本隊から切り離すことに成功したのです。」

「その時、わたし達の指揮官は戦死し、わたしとマリアが指揮を執ることになりました。」

「再び敵が攻めてきました。」

「ドイツ兵が数十メートル以内に近づくと、わたしは一斉射撃を命じました。」

「撃て!」

“バシュン!”

“バシュン!”

「わたしもマーシャもとにかく、目の前のドイツ兵を次々と仕留めていきました。」

「あまりの接近戦にわたしもマーシャも狙撃銃を置いて、サブマシンガンで応戦しました。」

「エ~イ!」

“ババババババッ!”

「わたしの目の前で3名のドイツ兵が薙ぎ倒されたわ。」

「ホラッ、かかって来い!」

“バババババババッ!”

「更に、4名がバタバタと倒れていったわ。」

「やったね!」

「まるで射的みたいだわ。」

「敵も必死だけど、わたし達も必死だったわ。」

「気が付くと、わたし達の眼前にドイツ兵の死体が50人ほど転がっていたわ。」

「敵も一旦退却して休息にはいったみたいね。」

「これだけ殺されたんだから当然よ。」

「わたし達も今日は随分たくさん殺しちゃったわね。」

「ホント、ホント。」

 

そして大きな損害を出したドイツ軍は再び迫撃砲で彼女達を攻撃し始めました。

“ヴォーン!”

“ヴォーン!”

敵の砲撃は熾烈でした。

ナタリア達の部隊の兵士も1人、また1人と討ち死にしていきます。

気づけば、ナタリアとマリア、そして男性狙撃手のノビコフの3人だけになっていました。

ノビコフは重傷を負っていて、とても戦える状態ではありませんでした。

ナタリアも負傷し、それでもノビコフを助けようとしたそうです。

後に唯一生き残った彼が病院でこの時の状況を説明しました。

やがてマーシャも傷を負い、2人で包帯を巻き合っていました。

やがて砲撃もおさまり、彼女達は力を振り絞って迫りくる敵に応戦しました。

彼女達は負傷したノビコフを置いて別の塹壕に移動します。

彼を戦闘に巻き込みたくなかったのです。

この時彼は、彼女達のある決意を感じたそうです。

盛んに応戦していた彼女達は更に十数名のドイツ兵を撃ち殺しました。

しかし彼女達は弾薬を使い果たしてしまいます。

 

弾が無くなって、尚且つ負傷している少女狙撃兵に対して、

ドイツ軍はロシア語で呼びかけます。

「もう君たちは十分に戦った。」

「降伏しろ!」

 

「わかったわ、少し待ってちょうだい!」

ナタリアの言葉を聞いたドイツ兵達は彼女達に近づきます。

すると、

「今よ、手榴弾でも喰らいなさい!」

「エ~イ!」

“ヴォーン!”

“ヴォーン!”

彼女達は持っていた手榴弾を1つづつドイツ兵達に投げつけました。

予想外の展開に5名のドイツ兵が吹き飛ばされて戦死しました。

彼女達の最後の抵抗に戸惑うドイツ軍指揮官。

「すぐに降伏したまえ!」

 

「マーシャ、わたし達もいよいよこれまでだわ。」

「覚悟はいいかしら?」

「もちろんよ、ナターリャ。」

「奴らを道連れにしなきゃ・・。」

いよいよ抵抗も終わったと確信したドイツ兵達は再び彼女達に近づいていきます。

「まだ少女じゃないか?」

彼女達を取り囲むドイツ軍兵士達。

うずくまって動かなかったナタリアとマリア。

いきなり2人が立ち上がると・・。

「死ね!」

“ヴォヴォーン!”

2つの手榴弾が同時に爆発し、彼女達は爆死したのです。

この爆発に巻き込まれて殺害されたドイツ兵は12名。

最後までナチスを殺すことに執念を燃やしたナタリアとマリアの壮烈な最期でした。

この2人の死にざまは一時意識不明になって病院に搬送されたノビコフによって

その後伝えられました。

 

1942年2月から戦闘に参加したナタリアさんは僅か半年の間に167名のドイツ兵を殺害。

マリアさんは134名を殺害。

このナチスキラーの少女達は8月に戦死するまでに300名以上のドイツ兵を殺害したのです。

彼女達の勇敢な闘いぶりとその功績により、ソ連邦英雄の称号が贈られる事となりました。

ナタリア・コフショワさんととマリア・ポリバノワさんは、死亡した場所、ノヴゴロド州に埋葬されました。

コロヴィチーノ村には、英雄を偲ぶ記念碑が建てられています。

オレンブルク協同技術学校の軍事栄光博物館には、ナタリアさんとマリアさんの愛国心の高さを示す資料があり、

若者の教育の一例となっています。

ナタリア・コフショワさん

マリア・ポリバノワさん                        戦場でのマリアさん(左)とナタリアさん(右)

戦場でのマリアさん(左)とナタリアさん(右)