わたしが新卒で勤務していたホテルでとても悲しい経験をした。実はホテルの常連のお客様に某大学の教授がいた。この先生ホテルからそう遠くないところにお住まいだったが頻繁にやってきてはレストランで夕食を食べて部屋で寝て帰っていく。無口な方だから会話なんて全くなし。元々お年の割りには少し老け込んでいて病気がちなのかと心配していた。そしてあの日先生はいつものように夕方にチェックイン。レストランでフランス料理を食べたがチーフの話だと殆ど残して食べられなかったようだった。お部屋に入られてからは音沙汰なし。翌朝チェックアウトの時間になっても姿を見せずわたしも心配になってきた。12:00すぎまで先生を待ってみたが現れないので電話してみた。ところが無反応、いよいよ心配度が増し始めた時に課長が夜勤のわたしにもう上がれと言ってくれた。結局は自宅で夕方頃に先生の逝去を知らされた。別に親しい間柄でもなかった訳だがとても悲しい気持ちになった。後日談ではこの先生身寄りが殆ど無く遠い親戚の方とやっと連絡がついたとの事。有名大学の教授という社会的地位があっても孤独な方だったようだ。最期の場所にわたし達のホテルを選んで下さったのは日ごろ無愛想ながらもわたし達の事を身近に感じてくださっていたんだろう。先生のご冥福を心からお祈りした。