恐怖体験といっても幽霊話ではない。わたしは大学を出てすぐに郊外のシティーホテルでフロントスタッフとして勤めていた。その頃のお話。新卒の接客課の男性は皆フロントの夜勤となる。そしてトラブルは決まって夜起こる。その日も駐車場に大型のベンツが停まっていて嫌な予感がした。案の定その筋のお方が1人チェックイン済み。嫌な予感が的中し早速電話が掛かってきた。“エアコンの調子が悪い!”というのである。そこでわたしが様子を見に伺うと他の部屋を見せろと言い出した。そこで他の部屋に案内している間にメンテスタッフに連絡。彼の部屋に戻るとメンテ屋が合鍵で中に入ってエアコンをチェックしている。マズイと思った瞬間だった。“俺の部屋に勝手に入るとはどういうこっちゃっ!”と怒鳴り始めた。その後は彼の部屋の真ん中にわたしとメンテと2人正座させられて監禁状態に。上半身裸で背中にはビッシリと刺青が彫ってある。そしてとにかく怒鳴りまくる。“落とし前つけんかい!”などと吠えまくる。空き缶を投げつけてくるが決して当たらない。当たった瞬間に暴行罪が成立するからわざと壁に向かって投げるのだ。コイツは本気でムショに行く気がないとわかった瞬間に逆手を取ってノレンに腕押しの行動を取ってやった。土下座して“申し訳ありません!”を3時間百万回繰り返してやった。さすがに何も取れないと分かるや脅しのエネルギーも途切れて“もう帰れ”と一言。やっと開放された。メンテが勝手に入室したのは明らかにこちらのミスでもあるから警察への通報はしなかったが若い頃の苦い経験の一つだ。