前回、バットとボールの反発係数がボールの初速に影響するとお話ししました。しかし、ボール自体、バット自体の反発係数はルールで規定されていますので、変更する事はできません。

しかし、ボールがバットに当たった瞬間にバットを強く押し込んでやれば、結果的にこの反発係数を高くするのと同様の効果を得ることが可能となるのです。

それでは、ボールがバットに当たった瞬間の事象について詳しく分析してみたいと思います。

 

まず、ボールがバットに最初に触れた直後からボールはバットによって凹む事になります。また、バットの方も多少はボールによって凹んでいるのかも知れません。そして、バットが進んでいくにつれてその凹み量は最大となり、ある瞬間にはボールの速度は0となります。その後にボールは元の形に戻ってくると共に、バットが移動しようとした方向にボールは加速され、跳ね返って飛んでいく事になります。

 

ここでこの事象を簡単に考えるために、バットは常に一定の速度(角速度)で動いているものとします。このバットに仮に前方から時速100Km/hにてボールがぶつかった時にボールが跳ね返った距離をDメートルとします。

このボールがバットに当たった瞬間から、跳ね返ってボールがバットから離れる瞬間までの間に、もしバットの速度が減速したとすると、跳ね返りの距離はどうなるでしょうか?この現象を想像してみるとバットがボールに押し込まれたような状態に見えると思います。

そうです。ボールの跳ね返りの距離はDよりも小さくなりますよね?これは容易に想像できると思います。感覚的にはボールがバットに当たった瞬間に、グリップを握る指の力を抜くような感じです。これでは打球は速く飛ぶはずがありません。

 

逆に、ボールがバットに当たった瞬間から、跳ね返ってボールがバットから離れる瞬間までの間に、バットが加速していればどうなるでしょうか?これも想像するに簡単だと思いますが、ボールは今まで以上に勢いよく跳ね返っていく事でしょう。つまりボールの跳ね返りの距離はDよりも大きくなります。

これがボールが当たった瞬間にバットを押し込むという事です。

 

つまりボールがバットに当たる瞬間に、バットの速度を最大にし、しかもそのインパクトの瞬間にバットを更に加速させる、簡単には強く押し込めればボールの初速を上げることが可能となり、ひいてはヒットの確立を上げ、更には柵越えホームランの可能性を高める事になるのです。

 

但し、バットを強く押し込むのはボールにインパクトした瞬間だけの方がバッターとしては有利です。次回はこの部分についてエピソードを交えてご紹介します。

 

これまで、ヒットの確率を上げるために運動エネルギーの事について主にお話しして来ました。

 

運動エネルギーだけを考えれば、バットを重くしてスイングスピードを上げて、しかも体から遠いボールを打てば速い打球を飛ばす事が出来るはずです。

 

しかし、この理論にはもう一つ欠けている観点があります。それは2回目でもお話しした「ボールとバットの間の反発係数」です。

 

今回はこの反発係数について考えたいと思います。

 

反発係数とは物体が別のものに衝突した際に、どれだけの大きさの跳ね返りの力を受けるかという割合を示しています。例えば、コンクリートの床にテニスボールとスポンジで作ったボールを肩の高さから落としたとします。

 

テニスボールは恐らく10cm程度は跳ね返ると思いますが、スポンジボールは数cm程度しか跳ね返らないと思います。この場合はテニスボールの方が反発係数が高いと言えます。

 

野球の硬式ボールの反発係数はルールによって厳格に規定されています。(のはずですが、メーカーによって飛んだり飛ばなかったりして問題になったりします)このため、ボールの反発係数は一定と考える事が出来ます。

 

では、バットの方はどうでしょうか?バットは素材が様々ですので反発係数も異なってきます。もちろん、木製バットよりも金属バットの方が反発係数は高いので、バッターにとって有利であることは間違いありません。

但し、公認野球規則によってバットの材質や形状等について細かく規定がありますので、同じ金属バットであればバットの選択によって大幅に反発係数が大きくなるという事は考えにくいと思われます。

 

それでは、それ以外に反発係数に関係している要素は何でしょうか?

 

それは、バットとボールが当たった時に、どれだけ力強くバットを押し込めているかという事です。

 

バットを押し込めるという表現だけでは不十分なのですが、バットとボールがコンタクトした瞬間を細かく考えればいろいろな現象が見えてきます。次回はこの事についてお話しします。

 

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前回、運動エネルギーから考えるとバットの先側の方が速度が高いので、アウトコースを打った方時の方が運動エネルギーが大きくなり有利というお話しをしましたが、実際にはピッチャーはアウトコース低めを狙って投球してきます。

 

これはやはり「打者から見て一番遠い球であるアウトコース低めは打たれにくい」という経験則から来るものと思われます。

 

実際に元プロ野球のピッチャーの方からもこの話を聞いたのですが、その理由はアウトコース低めの球は、バッターの目から一番遠くを通過するので、バットを当てる事が難しいからだという事です。

 

これを物理の目から考えてみようと思います。

 

バットは、右手・左手の両方で握ってスイングします。仮に右バッターの場合ですと、左手がバットのグリップエンド側を握り、右手はその上を握っています。

 

ここで、そのバットを地面と水平になるまで寝かせてきます。そして左手を固定した状態で右手を動かすとどうでしょうか?右手を仮に1㎝動かしてもバットの先端は10cm程動く事になります。しかしその状態でバットの長さの半分の場所であれば5㎝程度の動きになります。

 

つまりバットを操作してボールの芯に向かってバットを当てに行くのですが、バットの先端側になればなるほど、少しの手の動作での変位量が大きいために、より正確にバットを操作しなければ芯に当てられないという事です。

 

インコースであれば、右手の位置が1mm狂ってもそこそこボールに当たるのかもしれませんが、アウトコースであれば1mmの違いで空振りするかもしれません。

 

この事はボールの位置を把握する目の能力にも同様の事が言えると思います。遠いものより近いものを見た時の方が、その位置認識の精度は上がっているのでは無いでしょうか?

 

しかし前にお話しした通り、エネルギーという点ではバットの先側の方がスピードが高く有利です。という事は、アウトコース低めの遠い球に正確にバットを当てる技術を身に付ければ良いのです。

 

バッティング練習の時に、この事を頭に入れながら練習してみればどうでしょうか?

 

自分から遠い球を確実に捉えられる技術を磨いてみて下さい。そうすれば、速い打球を打つ事が出来ます。

 

でも実はこれだけでもダメなのです。。。そのお話しは次回に。