何日か前、施設の玄関に来ると、長いホースが玄関先から外に出ていて、その先から水が出ていた。中に入ると廊下をいっぱいに使って、そうめん流しの装置が出来上がっていた。職員さんが上の方から、そうめんを流している。また別の場所ではスイカ割り大会があっていた。外は猛暑だが中に入ると涼しい光景。こうやって入所者やデイサービスの皆さんを楽しませてくれている。そして今日は七夕。七夕飾りが3か所に飾られていた。今施設は行事が真っ盛り。施設側の努力には頭が下がる。

 

去年の今頃、僕は奥さんを居宅で介護していた。デイサービスに行って、帰りに七夕飾りを作った様子を写真に撮って持たしてくれた。短冊に願い事をそれぞれ書いたのだが、奥さんは「お父さん愛してる」と書いて、皆さんの笑いを誘ったとケアマネさんから聞いた。僕も笑ってしまった。「それ、願い事じゃないでしょ。趣旨が違うよ」と思ったけど、奥さんが一番言いたかったことを書いたんだろうね。ありがとうね、愛してくれて。

 

今年は何も書いてないようだった。面会に行ったのは昨日。奥さんはベッドで眠っていた。「お母さん」と僕が声をかけると薄目を開けた。「ベッドを斜めにして体を持ち上げていい?話しにくいからね」「うん」とこっくりする。スイカとメロンとキューイを少しずつ食べてくれた。なんだか元気がないので、ベッドを元に戻して、「眠っていいよ」という間もなく、軽いいびきをかいて、寝入ってしまった。寝ているときが、今の現実を見なくてすむから、奥さんはこれが一番幸せじゃないかなと僕は勝手に思ったりする。

 

けれど、起きてる時も、彼女には少しでも幸せでを感じてほしい。そのためにほとんど毎日面会に行っていると言っていい。。

 

今週の超多様性トークショーは奥さんが脳性マヒで手足に障害があり、加えて解離性健忘という病気も抱えているご夫妻だった。解離性健忘はトラウマやストレスなどで、記憶を失う病気で彼女の場合、一切の記憶が無くなり、言葉の意味も分からなくなるようだ。今2歳の息子さんを育児中である。手足にマヒがあるから赤ちゃんを抱くこともできない。いろいろなハンデイを背負いながら、結婚し子供を設けて家庭を営む。ご主人もそういう彼女をムリなく受け入れて、はたから見れば苦労と思うようなことを苦労と感じずに生活している。彼女は言う。「普通はこうでなく、私はこう」ということで考えていきたいと。「そのままに在れる社会が超多様性だ」と。いつも思うが世の中には僕の想像を絶する世界で生きている人たちがたくさんいる。この番組はほんとうに刺激に満ちている。