雨が続くせいか、奥さんは元気がなかった。食欲もさほどなかった。竹の子の煮物にちょっと口を付けてくれたが、いつものようには食べなかった。

「何か持ってきてほしいものない?」「ない」「何か食べたいものない?」「ない」

呼びかけても小さく答えるのみ。そして傾眠傾向が強く、顔が下を向く。眠いから機嫌が悪かったのかな。鯉のぼりは雨なのに、しまわれずびしょ濡れだ。なんだか寂しい風情だ。こんな日もあるか。一歩後退。仕方ないとあきらめる。

 

今朝(けさ)サンドウイッチマンの病院ラジオが放送された。舞台は福岡市のがんセンターである。がんは年齢に関係なく襲ってくる。小児がんの子たちが画面にちらほら映る。悪性リンパ腫(血液のがん)の20代の青年男女。スキルス性胃がんの10代の女性。重いものを背負ってる人ばかり。僕が特に心を動かされたのは47歳のヒサコさん。ご主人を11年前にくも膜下出血で突然亡くした。二人の子供を一人で一生懸命育ててきた。今度は自分が大腸がんになった。「神様はいない」と思ったそうだ。わかるなあ。神様はこれでもか、これでもかと試練を与えるものね。

 

でも皆さん、生死の瀬戸際を乗り越えてきている。そして一様に語るのは家族のきずなを再確認したということだ。僕はヴィクトール・フランクルの言葉を思い出す。ホロコーストを生き延びて「夜と霧」を書いた人。彼はこういう。「それでも人生にYESという」「人生のどんなことも意味がある」極限の状況にあっても、あきらめず生きる意味を問い続けようと。

 

こういう人たちの人生を見せられると、自分もしっかりせねばと思う。奥さんは介護認定5で特養に預かってもらっているが、幸い僕は元気だ。まだまだ奥さんに寄り添いながら、充実した人生を送られるはずだ。病院ラジオにはいつも元気をもらう。