僕がCCレモンを持ってきたのを奥さんは目ざとく見つけて、「飲みたい」という。

ペットボトルを僕が支えて、口に当てたら、ごくっと飲んだ。3回口に当てて飲まそうとしたが、結局、飲み口の方から5cmくらいしか減ってない。「美味しい」と言った割には量が進んでいない。飲む力が弱いのかな。でも食べ物はしっかり、食べてくれた。

 

竹の子の土佐煮は食べてくれるか自信がなかった。「土佐煮作ってきたけど、食べる?」「うん」「どう?」「・・・・」「美味しかったら美味しいと大きい声で言って」「美味しい」「要求しないと言ってくれないんやね。言っとくけどこれはスーパーで買ってきた総菜じゃなくて僕が味付けしたんだよ」「ハ、ハ、ハ」

 

「雨がすごいね」と奥さんは外の遠くを眺めながら僕にいう。「たまには雨も降らないとね、お百姓さんが困るから」と僕は返す。こんな会話、昔もよくやってたなあ。

「せとかとイチゴも持ってきたけど、食べる?」「食べる」「腐ってたらいけないから、僕が一つ味見するね」「腐ってないよ。自分が食べたいだけやろ」「いやお母さんのための自己犠牲だよ」「ハ、ハ、ハ。ウソだ」

 

食べたら眠くなったか、目をつぶって、顔が下を向く。「起きて!お母さん」と声をかける。奥さんは薄目を開けるが、また寝てしまう。「お母さんが眠るならもう帰るよ」というと奥さんは再び薄目を開けて「いやだ」と大きな声を出す。

 

「じゃあ、自分の生年月日を言ってみて」「5月・・・・・・・・・」「覚えてないの?」「うーん」「じゃあ紙に書いてあげるから、次にくるとき言えるようにしてね」「・・・・・」

 

生年月日は言えなかったけど、まずまず元気だ。体重もコロナ感染前のレベルまで戻ったという。今まで果物しか食べてくれなかったけど、今日初めて総菜を食べてくれた。そして何回か笑ってくれたから、それで良しとしよう。