屋根裏のラジャー | Zatolog

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つれづれなるまゝに、日暮らし、硯に向ひて、心に移り行くよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、怪しうこそ物狂ほしけれ。

日々感じたことを、忘れずに、共有し、共感し、共生したい。

屋根裏のラジャー@ユナイテッドシネマ豊洲


スタジオポノックの描く、新たな友情の物語。

子どもが思い描く、イマジナリと呼ばれる空想上の「ともだち」との触れ合いが見事に描写されていた。


冒頭のラジャーの台詞で引き込まれた。

「見たこともない鳥、見たこともない花、見たこともない風、見たこともない夜、そんな素敵なもの、見たことある?」

生まれて3年と3ヶ月と3日というその少年の一言で、疑問から物語の導入になり、結末でその疑問が払拭されて明るい気分になるのは見事だった。


ただ、とにかく設定が小難しくて、興行的には苦労するだろうとも思えた。

実際に苦労しているようで、朝一番の上映回ということもあってか、観客は私一人。

映画の内容も相まって、一抹の恐怖を感じた。


イマジナリが生まれるときには、孤独や悲しみ、苦しみなどのマイナスの感情が必要なのだと思う。

子ども特有の世の中から取り残されているのではないかという思いが、逃げ道としてのイマジナリを生み出すのだろう。

大人になるにしたがい、世の中との付き合い方(折れ方と言ってもいい)を覚え、自分だけのイマジナリを必要としなくなっていく。

そして生み落とされたイマジナリたちは、新たなともだちを求めて、姿を変えていくことになる。


最大の難点は、主人公たちであるアマンダとラジャーに立ちはだかる悪役が何故イマジナリを食べるのか、動機が不明な点。

追い回される恐怖は描けているが、できれば彼も救ってあげて欲しかった。


スタジオジブリの正当後継スタジオとして、そのアニメーションのクオリティは高い。

ただ、観客の求めるモノはコレじゃない感は否めない。

とはいえ、その求めるモノがジブリのコピーであることを打破しなければならないのも自明。

声優でなく俳優で演じさせることも踏襲しているが、良し悪しあり、か。

これも、忘れることは失うことというこの作品の根底にあるテーマと呼応しているということか。


目標まで、あと96本。