「サラダ食べようよ!」
部屋着に着替え終わってすぐに
そう言った彼女は、冷蔵庫からレタスとトマトとアボカドを取り出し、オレにトマトを切るように頼みながら彼女は手際よくレタスをお皿にのせ始めたのです。
オレの中で先程のナマ足がまだ消化しきれてない状態で、トマトの切り方は、何でも良いのか確認したところ、四角いブロック状と注文が入りました。
どうやって切るのか悩んでいたら、オレの手から突如包丁を取り上げアボカドを切り始めたんです。
酔ってる彼女が包丁を持って大胆にアボカドを切ってる姿は、指を切らないかと心配になり、違う意味でドキドキしたシーンでした(笑)
そんな彼女から、女性と付き合ったことのないオレにとって、本来の意味でドキドキするひと言が、飛び出しました。
「なんかさ、こうやって二人並んで作ってたら、新婚夫婦みたいじゃない?」
って、照れた表情からニコッと微笑む彼女にキュンとなってしまいました。
このままだとヤバい…
今まで女性からオレを誘うパターンの場合、良い思い出がなったことを頭に浮かべても、ここまで一緒に過ごした数時間のほうが、今にも勝りそうな状態になってるのが自分の中でわかりました。
このままだと本気で好きになりかねない、そう感じたオレとしては、彼女には彼氏がいる!彼氏がいる!彼氏がいる!
と呪文のように頭の中で繰り返しました(笑)
そんなことを頭の中で展開されてると彼女は知るはずもなく、サラダを作り終えて食べる前に…
「ねぇ、食器洗ってよ」
と、使ったまな板や包丁と一緒にシンクの中に置いてあった食器も洗ってほしいと言うのでした。
食器洗いなんて誰もが1度は経験したことあると思われるほど、難しい作業ではないですよね?
そのためオレは…
「いいよ!すぐ洗うからサラダ先に食べててよ」
と難なく終わらせて一緒にサラダを食べるつもりアピールをしたのです。
ところが、そんな食器洗いも彼女の前だと凄く難しい作業になると、洗い始めて直ぐに実感しました。
「えっ、ちょっと何をするの…」
食器を洗い始めて直ぐに、彼女はサラダを食べるどころか、オレの後ろに回り込んでギュッと後ろから抱きしめてきたんです。
もちろんオレには、女性を抱きしめた経験なんてありませんし、抱きしめられた経験だってありません。
そのため正直パニックでした(笑)
「何か凄く良い匂いがする」
ってさらに強く抱きしめられたうえ、オレの匂いまで嗅がれ…恥ずかしさのあまり、食器洗いに集中しなきゃと頭の中で、洗う!流す!洗う!流す!って考えながら、なんとか終わらせることができたのです。
終わったことを告げ、ようやく抱きしめ状態から解放されたオレは、一緒に先ほど作ったサラダを食べることにしました。
いざサラダを食べようとしたら、彼女が突然立ちあがり、冷蔵庫から冷えた缶ビールを2本持ってきたので…
「オレは飲まないよ?」
と話した瞬間…
「私が2本とも飲むんだよ(笑)」
とお酒好きらしい最大級の笑顔で答えられてしまったのです。
今までは仕事で会うだけでしたので、かわいいとか綺麗とかそういう感情が沸き上がることは、ありませんでした。
ここに来て、怒濤の挑発や最大級の笑顔で話されたために、今までには感じなかった、彼女に対する新たな感情が芽生え始め、少し心が揺らいでると自分でも感じ始めました。
「一緒に録画したアニメ見よう!」
サラダを食べながらアニメを見たのですが、それは過去に1度オレも見たことのあるアニメでした。
そのアニメを彼女は何回も見ているらしく、このシーンの誰々と誰々が何々でと解説をしたかったらしいのです(笑)
解説をしたいなんて聞いてしまうと、更に可愛いなと心がポッと温かく、さっきまで緊張でドキドキしてたオレの表情も、締まりのないニヤけたものだったに違いありません(笑)
彼女のビールも2本目になり、解説も順調に気分も最高潮になったのか…
「次のシーンで抱きしめ合うんだよ、きゃーっ」
なんて言ったかと思うと、彼女がまたオレに抱きついてきました。
ヤバい、この流れ…
抱きついてきたかと思ったら、次の瞬間に沈黙。
こっちをじっと見つめてきたんです。
オレは恋愛経験こそ1度もありませんが、恋愛漫画やドラマを見たことは沢山ありますので、このまま見つめ合えばオレにとって初めてのチュウになる予感がありました。
この彼女には彼氏もいますし、オレはこの時点で心の揺らぎはあったものの、まだ好きにはなっていなかったので、思いきって踏み込むこともできずに話をごまかしてその場を逃げたのです。
その後ソファーに移り、一緒に座って続きを見ていたら、酔っている彼女には諦めることができないのか、今度はオレの膝に頭を乗せてきて膝枕の状態に。
さすがにオレも今の気持ちをちゃんと伝えたほうがいいかと思い…
「普通の人なら手を出すようなシチュエーションでも、何の経験もないオレには彼氏がいる人に手を出す勇気はないよ」
思いを伝えたことでわかってくれたのか…
「何もしなくていいから、このままでいさせて」
と顔をテレビの方に向け、右手でオレの膝を押さえながら、聞いたことのない甘い口調で答えてくるのでした。
オレの中で、なんかモヤモヤしたもどかしさがありましたが、このままの状態で時は過ぎていき、ついに帰る時間に。
無事何事もなかったので、理解をしてくれたと思っていたら、まさか最後の最後にあんな事がオレに起こるとは、この時のオレは思ってもいませんでした。
⑥に続きます。
ありがとうございましたm(_ _)m