余市・仁木・小樽のワイナリーガイド(仮・開業準備中)の「ばたやん」こと田畑茂人です。
書評シリーズの2回目。このシリーズの根幹は「北海道」です。
私は小説が好きで、そこそこ多くの作品に触れてきたと思います。北海道が舞台の作品で、北海道がハッピーアイランドとして描かれたものは少ない。
北海道を表現するとき、厳しい自然という切り口は当然あるのですが、過酷な貧しさが底流あると感じています。
「ラブレス」(桜木紫乃著、2011年、新潮社、写真は文庫版)。
描かれる開拓農家の極貧の様子は凄まじい。私(1964年生まれ)ですら、両親や叔父・叔母などから聞く話は必ず貧しさを感じていた。
北海道の経済は首都圏の10年は遅れているという話はあるが、今や過酷という貧しさは脱した。だが、北海道に住む我々にはどうしても拭えない「貧困」に対する嫌悪が行動様式を決しているように思う。
「一発当てる」ことへの憧憬や、「すってんてん」になる事への過度な警戒心。金銭には合理的でありながら、時に見栄を張る。どこか、荒っぽさが見え隠れする。
「ラブレス」の読後は、人の心情が、金銭の感覚と絡みつき、剥がしきれないものだと感じざるを得なかった。
近い感覚はドラマ「北の国から」にもあったように思う。
「ラブレス」は釧路を中心に描かれている。ストーリーの重さは、霧にけぶる情景だけが作り出したものではない、そう思う。
過去は、未来の羅針盤となる。北海道は成熟に向かって変化を起こせるだろうか?