YAHAMA TRB Custom その① | ベーシストとエフェクター

YAHAMA TRB Custom その①

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TRB Customについては、いろいろと思い入れもあることから、もう少し詳細のご紹介をしてみたいと思います。


80年代後半だったと記憶していますが、普通の地上波TV(当時はBSなど全く普及していなかった)でMusic Partyという番組が放映されました(youtubeでも見ることができると思います)。その番組中、カシオペアの櫻井さんがこのTRBのプロトタイプと思われるモデルを使っていたのを見たのが、TRB Customとの出会いだったと思います。この番組は今思えば結構凄くて、カシオペアと久保田利伸、土岐英史が参加。番組自体の話をすると、これはこれで長くなってしまいそうなので止めておくことにしまが、動画でカシオペアの演奏を目にする機会に当時はあまり恵まれていなかったこともあり、このようなコンテンツの放映自体が新鮮だったこともありますが、とにもかくにも、櫻井さんの使用楽器が強く印象に残ったのを記憶しています。


さて、その番組中、カシオペアがオリジナル曲「CONJUNCTION」を演奏しています。テレビらしい演出ですが、アコースティック楽器を携えるタキシードを着込んだフォーマルなカシオペアと、エレキ楽器やデジタル楽器を手にするラフに着崩したカシオペアが、画面の左右に別れてセッションをするという企画がありました。櫻井さんはその中で、TRBプロトを使ってベキベキスラップと、見たこともない竿のような楽器(のちにそれがエレクトリックアップライトstud-Bであることを知る)を操り、1人2役で競演しています。


かねてよりYAMAHAユーザーであり、デビュー当時こそFender JB(黒PG、ナチュラル)を使っていたものの、それ以降はずっとBBや同氏オリジナルモデルを使用。そのような流れもあり、このベースも当然YAMAHAであろうと推察。一方、80年代はEMGピックアップが発売、SpectorやSTEINBERGERの台頭もあり、自分自身もBB5000からTUNEのダブルプリアンプ搭載機種に持ち替えた時代、まさにアクティブ全盛。そんな中、パッシブ路線を貫くYAMAHAも本格的にアクティブ路線へ参入するだろうとの憶測ある中で目に(耳に)したTRBの音は、自分にとってはかなり衝撃的でした。


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ベキベキというか、ガシガシと表現したほうが良いのかも知れませんが、誤解を恐れずに言えば、従来のパッシブ路線から普通一般的なアクティブを飛び越えて、BBシリーズに代表されるYAMAHAベースサウンドの面影を上手く残しながらもハイパーアクティブとでも言うべきサウンドを確立したような印象です。当時のTRBプロトの詳細specは知る由もありませんが、音を聞く限りに於いては市販モデルTRB Customと全く同系統の音。当時、TUNEが圧電素子をつかったピエゾPUのみを搭載したフレットレスベースを市場に投入していたこともあり、おそらくはピエゾも搭載されていたのではないかと思います。


そんな強い印象を受けたものの、90年代に入り自分も社会人になり、音楽ベッタリの生活からやや距離を置くようになったこともあって、国産ベースとしては破格の値段で市販されたTRBを買おうとは、よもや当時は考えもしませんでした。


時が流れ、仕事やビジネススクールでのハードな日々が落ち着いてバンド活動を再開したとき、自分は迷わずもう1つの心残りであったWARWICK THUMB BASSを手にしました。今でもTHUMBは自分の不動のメインであり続けていますが、TRBへの思いもあったことから、並行して楽器店で現行TRB(輸出仕様の6PⅡ)を試してみますが、どうもしっくりこないという印象を受けたのを覚えています。決して楽器として悪いものではなく、むしろTRBプロトとは異なる、よりオールラウンドな使用に堪えるセッティングを施されたベースであったとの印象ですが、直感的にグッとくる、10年以上前に強い印象を受けたTRBとはどうも別物に感じて、今までずっと手を伸ばさずにいた経緯があります。なのでオークションでTRB CustomやTRB-Sなどを見かけても、凄いなーとは思うものの食指は伸びませんでした。


そんな中、今手元にあるTRB Customを試奏する機会に恵まれ、爪弾いた瞬間、冒頭にご紹介したTV番組を見たときの衝撃が一気に蘇りました。すげー、あのときに聴いた、そのまんまの音だ・・・ 物は試しで試奏させて頂こうと思っただけなのですが、即買。だいぶ前にもお話をさせて頂いたかと思います、自分だけかも知れませんが、人間の「味」と「音」の記憶とは凄いものだなと改めて思いました。


そんなこんなで、TRB Customのご紹介をしようと思ったら前振りだけでこんなに長くなってしまいましたので、本機のご紹介はまた次に譲りたいと思います(汗)