■BOSS GT-10Bは、すごい | ベーシストとエフェクター

■BOSS GT-10Bは、すごい

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EZ-TONE機能など、直感的なインターフェースの採用による操作性の良さが大きく取り上げられていますが、今回の10Bのポイントは以下の3点に尽きると思います。個人的な結論から言えば、特定部分を除けば、リーサル・ウェポンといっても差し支えないほぼパーフェクトな仕上がりと思います。


①兎にも角にも、基本性能がしっかりしている。


まだ、隅から隅まで使い込んだわけではないので、基本性能を「バイパス」「コンプ/リミッター」「ドライブ系」に限定して言いますが、謳い文句に違わず、本当にしっかりしています。


まずは一番大事にしたい「バイパス」。前モデルの6Bでは、通すと細くなるという言われ方をしていましたが、自分的にはハイエンドがカットさされる傾向があったので、通しただけでダイナミックレンジが狭くなる印象がありました。確かトゥルーバイパスを謳っていた気がしますが、明らかに音は違いました(機械式のループを使って、同じspecのBELDENケーブルを使って、更に、A/Bチャンネルを入れ替えてまでチェック)。この10Bはどこにもトゥルーバイパスとは書いてありませんが、シールド直結と比して、少なくとも聴感上は音質変化は感じません。バイパスだけで、ちゃんと作りこんでいることを感じました。


次は「コンプ/リミッター」。dbx、fmr audio、SUMMIT AUDIO、UREI(LA4)、keeley、demeter、CAE、guyatone、EBS・・・ これ以外にも自分は数多のコンプ/リミッターを使って参りましたが、10Bがあれば、もう単体コンプはいらないくらいのクオリティです。完全にknock out、良くぞここまで仕上げたと感嘆してしまいました。7種のコンプ(multicomp、UREI1178、boss dbx等)あり、これをcosm技術で忠実にモデリングしています。音のつぶれ感やオーバーシュートしたときのザラツキ感や質感、艶感までもしっかりと再現されています。それだけでも、十分評価に値するのですが、10Bの凄いところはその先にあります。それぞれのモードで、通常はモデリング対象となったコンプと同様のコントロール、例えばmulticompの場合は、level・comp・low threshold・high threshold(EBSは裏ブタを外してミニトリムで調整できます)をコントロールできるようになっているのですが、10Bの場合は、さらにドリルダウンして、より詳細なコントロールをできるようになっいます。例えばこのmulticompの場合はlevel・attack・ratio・low band crossover・low threshold・mid band crossover・mid threshold・high band crossover・high thresholdが操作でき、オリジナルのmilticompでは設定されていない、入力信号を3つの任意の周波数帯域に自由に分割し、attackタイムは共通ながら、それぞれの帯域別にthresholdを設定することが可能です。一番うれしかったのは、名機urei1178も同様で、本物ではコントロールできない細かいattackタイムやratioの設定、さらにコンプレッションのセッティングが決まった後に、圧縮して引っ込んでしまった音に輪郭を与えるためのプレゼンスコントロールまで付いています。聴感上、限りなくオリジナルに近いモデリングをするだけでなく、さらにそのオリジナルを超えてやろうという、開発者の熱意が伝わってきます。モデリングだけなら、本物と同じにはなれてもそれ以上ではなく、マネでしかありませんが、10Bのオリジナリティが加わっていることを確認した瞬間、10Bのコンプはベストコンプと相成った次第です。コンプだけでも、49800円の価値があるように自分は感じます。


次は「ドライブ系」ですが、これも秀逸です。自分は元々クリーントーンが主体ですので、ドライブは8ビート系の曲でアクセント的に用いる使途がほとんどですが、とにかくいろんなニュアンスが出せる。特にこの歪み系のコントロールの場合はEZ-TONEなんかの操作性が便利です。粗いザラザラした歪みと、細かくクリーミーな歪みの間を無段階で直感的に操作してスィートスポットを探せるメリットは大きいです。モデリング対象を見てみると、結構ギター系のエフェクトが多いように見受けましたが、これはたぶんGT-10の心臓部である歪みを若干アレンジして10Bに移植したためではないかと推察しますが、10Bのコンプと同様の情熱を持って手を抜かずにしっかりと作り込まれた印象を受けます。自分のお気に入りはプリアンプのセクションでAmpeg SVTを軽くドライブさせてそれにboss系の歪みをかぶせ、ミッドをやや強調した細かめのクリーミーな歪み(表現が難しいでしょうか?汗)です。fulltone bass-driveのような決して埋もれることのない芯のあるドライブサウンドが簡単に作れてしまいます。


②ベーシックなモジュレーション系はほぼパーフェクト。


何を持ってベーシックと言うかという議論はありますが、コーラス、ディレイ、リバーブ、フランジャー、フェイザー等、デジタル然としたものから、アナログシミュレートのものまであります。この辺は自分的には更に使用頻度が低いものばかりですが、さすがにBOSS/Rolandのお家芸の領域であり、文句の付けようがありません。コントロール類の操作性を含め、パーフェクトです。


③シンセのピッチ検出が異常と思えるほど早く、使える。


GRシリーズのような専用ピックアップを使うタイプのシンセではなく、AKAI Deep ImpactやBOSS SYBのような、ベースサウンドのピッチを検出して、その信号を元に音源を鳴らすタイプのシンセと思われます。この「思われます」というのが、このインプレのキモです。取説を読めば書いてあるのかも知れませんが、普通に弾いていると、あまりにその追随性がパーフェクトなので、原音加工系のシンセと思ってしまうのですが、音が明らかにベース音を加工したものではなく、内部音源を起動しているとしか思えない、シンセそのもののサウンドなのです。まあ、ノコギリ波・スクエア波から音源タイプを選択するので、音源駆動タイプであるとみて間違いないと思うのですが・・・ そんな疑いというか、本当に内部音源鳴らしてるの?って疑問に感じてしまうほどの完璧な追随性、16ビートの細かい刻みもまったく問題ありません。さすがに音色の種類は少ないのですが、それでもシンセベースで使う音色は音はノコギリ波・スクエア波等、ある程度限られていますし(あとパルス波があればカンペキ)、その範囲に於いては、この分野で1つのマイルストーンを築いたAKAI Deep Impactと比肩するサウンドと追随性です。「使えるシンセ」という意味では、このマルチにこのシンセが搭載されている意味は非常に大きいと思います。


ということで、5万円前後で秀逸でオールマイティーなコンプ・ドライブ・シンセ・モジュレーションを買う、というだけでも十分に価値があると思いますし、それ以外にも、BOSS RC-2 loop stationの簡易版が付いているので、演奏を重ねながら独演会もできますし、まだ使ってませんが、ワウやリングモジュレーター、ピッチシフターなどもあるので、コストパフォーマンスは高いと思います。


唯一残念なのは、前にも説明しました通り、ピッチベンドがダメダメです(涙)マルチだからといってBOSSが手を抜いているとは考えられないのですが、まさにクルマのシフトと同様、変速というかシフトショックがあり、まるで階段を昇降するような非連続なペダルベンドです。初代~2代目ワーミーのごとく、CVTのような無断変速の連続的で音楽的なペダルベンドはできないものでしょうか。これは非常に残念。外部エフェクト用のsend-returnがあり、これを10B本体のエフェクト群と一緒にエフェクトループに組み込んでプログラムできるのが唯一の救いです(しかも接続順まで指定できるマニアックさ)。


と言うことで、足元は Roland GR-20→BOSS GT-10B→send→digitech WHAMMY WH-1→return to 10Bと、10Bをコアに据えたシステムに大幅刷新いたしました。今はまだこのシステムで試行中ですが、ある程度音作りが追い込めた段階で、このシステムに本格移行の予定です。


でも、まだまだ自分の知らない隠れた機能がたくさんありそうです。やっぱり取説を読まないと行けないんでしょうか・・・ あと、USB経由でパソコンに接続してコントロールすることも可能なので、昔のYMO(というか松武秀樹さん?)のように機材の上にパソコンを置いて、意味もなく曲間にイジる、というパフォーマンスにもあこがれます。ディスプレイはもちろん、客席側に向けますよ(笑)