■WARWICK Thumb Bass TN 6st  その2 | ベーシストとエフェクター

■WARWICK Thumb Bass TN 6st  その2

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皆さまからのリクエストもあったので、3本のサムを並べて写真を撮ってみました。並べてみて、初めて気付かされることもいろいろありました、はい。とりあえず3本の主要specを簡単に比較してみます。


     サム6FL  サム4   サム6

製造年 2003   1989   2007
ボディ   ----ブビンガ----
指板  エボニー ウェンジ ウェンジ
ネック   5p    7p     7p
PU    MEC   EMG   MEC
プリ   aguilar  EMG   BEC


大きなところではこんな感じですが、写真を眺めていると時代の変遷と共に木部やハードウェアのみならず、ボディワークも細かく変わってることに気付きます。サム4は80年代創成期のものでもあり、現行のものと大きく異なります。7pのウェンジ+ブビンガネック、ポジションマーク、ブラスナット、shaller製ハードウェア、EMGのエレクトロニクス等が特徴。もちろん、サウンドも現行サム4と比較して基本キャラは変わらないものの、よりブリブリと中域のキャラが立つ独特の個性的なサウンドです。


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ところがこれよりも、ほぼ同世代である6弦フレッテッドとフレットレスで細かい仕様違いがあることに興味を惹かれます。自分がオーダーした6弦フレッテッドで注文したのは「ウェンジ指板で、時間がかかってもいいからネックはシビアな状態を維持できるように丁寧に仕上げてほしい、サウンドの狙い目は新旧サムの融合的なもの」、これだけです。その結果としての仕様違いなのかは定かではありませんが、確信的にオーダーした指板材の変更以外の相違点は以下の通りです。


・ボディ形状
 よくみるとわかりますが、今回オーダーした6弦は、2003モデルに比してカッタウェイが浅い。
・ヒール部
 カッタウェイが浅いのに伴い、ヒール部の処理も2003モデルとは異なり、ネック接合部が広く、厚くなっている。(これによる演奏性の低下はまったくなし)
・ネック
 2003モデルは5pオバンコルなのに対し、今回オーダーした6弦は7pオバンコル+ブビンガ。
・その他
 ナットが、すぐに壊れるJUST-A2から進化したものになっている(素材変更はなさそう)。


気付いたところでこんな感じですが、ボディ形状の違いのせいか、重量も違います。2003モデルは5.24kgなのに対して、オーダーモデルは5.5kg。20g単位でしか量れないのですが、総重量のズッシリ感もあってか、250gの違いというのはストラップで吊ってみると結構体感します。ブビンガとオバンコルでは比重がそれほど変わらないし、ウェンジとエボニーでは寧ろエボニーの方が比重が高いと思うので、この重量差はやはり形状の相違によるところが大きいと思います。


そんなこんなで、いろんな要素が混沌となって、プチカスタムのサム6は狙った線の音を出してくれます。2003モデルや2007モデルの5弦と比較すると、サウンドの重心がより低く、重量感のあるサウンドであるような気がします。重低音部分というよりは、むしろ中域が太いことによる印象があります。高域は現行サム特有のビキビキっとしたものですが、倍音成分の違いのせいか、エボニー指板の現行サムよりは同じウェンジ指板のSTREAMER-2にややキャラクターが近い感じ。軽くスラップしただけで、ものすごく存在感のあるソリッドな音が出てきます。


音というのは所詮、音そものを介してしか伝えることができず、加えて極めて主観的なもの。そういう難点もあって、今回の高額なオーダーをするにあたっては相当な勇気を要しました。でもショップの方とじっくり時間をかけて自分の希望を理解してもらい、結果としてカスタムオーダーの形になったのは指板材変更のみでしたが、「指板材変更」という表面的な部分だけでなく、そのコンテクストも同時に伝えてもらった(と思っています)ためか、ネック材や構造にまで気配りが及び、結果として正に狙った通りの音が出てきたというのは、自分にとって幸運としか言いようのないことだと思います。自分の思いを形にしようとしてフルオーダーしたのにイメージと違う、という話もよく聞きますので・・・ 実はこのプチカスタムのサムのボディ形状、よくよく見るとウェンジネックの頃のカッタウェイやヒール処理の形状そのまんまなんです。つまりボディワークは、指板変更のみのプチカスタムのつもりが、結果的には旧仕様のサム6のネック材のウェンジ部分をオバンコルに変えたものになっているという訳なんです。関係筋によれば、WARWICK社のCTO(技術責任者)は日本と本国との気候の違いによって起こるネックに関する様々な影響を真摯に受け止めていたとのこと。


プロセスはさておき、狙った通りのサウンドにようやくめぐり合えた、というのは長年ベースを弾いてきた自分としては、この上ない喜びです。ネックのスタビリティに問題がでない限り、メインベースとして末永く付き合うことになると思います。5.5kgという重量だけが、唯一の不安材料ですが・・・