■Fender USA '76 JAZZ BASS powered by TCT | ベーシストとエフェクター

■Fender USA '76 JAZZ BASS powered by TCT

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ヴィンテージ、というにはまだ若い楽器で、ネック・フレットに調整が入っていて、PU・ポットも一部を除きオリジナルではありません。またプリアンプ搭載モディファイ物でもあり、ヴィンテージ的な価値はないかも知れませんが、店頭にあったものを一度弾いて、その感触・弾き心地、サウンド、アピアランス・・・ いろんな要素が五感に染み付いてしまって、この1ヶ月ほど、ずっと忘れられず、夢の中に出てくるまでに"病"は進行。ということで、またまた散財してしまいました。ただ、誰が見ても高額と思うような銘木系やハイテク系素材のピカピカの多弦ベースと違い、知らない人にはただの小汚いおんぼろベースにしか見えないので、その辺は別の意味で助かりますが(笑)


シリアルは670xxxで始まり、76年製とのこと。重量はヘルスメーター測定で5.2kg。割と重めな方なのでしょうが、それほどズッシリとはこない、かといて軽すぎもしない、バランスのよい重量感。試奏時に渡されたときに最初に感じたのはその部分。で、持った瞬間感じたのは、ネックの素性のよさ。ビシッとまっすぐでねじれが全く感じられず、弦高も自分の好みそのもののセッティング。ヴィンテージ的な価値を追求すると違うのでしょうが、指板はサテンフィニッシュ仕上げになっており、フレットもばっちり手が入っていて、ネックを握った瞬間、音を出す前に「こりゃ、やばい・・・」と思ってしまいました。昨年手に入れた'79 StingRayもリフレットされていますが、やはりプレイヤーとしてはこの辺にちゃんと手が入っている楽器にはとても大きな魅力と価値を感じます。また、60年代や70年代前半のジャズベに穴を開けたりするのはいささか勇気がいるし、80年代に入って来ると所有欲的な部分で食指が動かなくなる。この個体は、ボディのコンターのかけ具合がやや少なく、艶かしさがいささか足りない気もしますが、総合的には、70年代中~後期にかけてのジャズベというのは、心理的な障壁もそれほど高くなく、とっつきやすいフレンドリーな印象を持っています。


最初の音出しはパッシブ。DUNCAN製(多分SJB-1)のピックアップは、程よく乾いたアッシュボディ+メイプルネックらしいサウンドをストレートに出力してくれます。良い音ではあるのですが、ちょっと線が細い気がするので、現在、同じくDUNCAN製のAntiquityⅡをオーダー中です。より、ミッドに腰のある、男っぽい、パッシブサウンドを狙っています。話はそれましたが、ばっちり調整されたプレイアビリティの高さも手伝い、パッシブサウンドだけでも相応に魅力的なのですが、この個体には、日本国内の工房でbartolini TCT+BADASSⅡが組み込まれています。いわゆるMarcus Modifyというのでしょうか、自分はどちらかというとフュージョン系の育ちでMarcusフリークというほどではないのですが(もちろん、彼の独特の粘りとバネのあるgroove感は大好きです)、MarcusファンならずともFender '70s JB+TCTのサウンドは、幅広く受け入れられるサウンドなんではないかと思います。かく言う自分もこの音は大好きで、なんとも言えない絶妙なバランスと耳あたりの良さ、ベーシストの感性にダイレクトにグッとくる「何か」があると思っています。いわゆる最新のアクティブベースのような澄み渡るクリアさではなく、あくまでもFender JBらしい音の腰と枯れ、ほど良いgrowl感とdirtyさを持つサウンドをプラットフォームにしつつ、TCTがパキっとスパイス的に効いている音です。 StingRayとはまったく違った印象のサウンドですが、広く長く愛される4弦ベースの王道サウンドは、やはり自分がベーシストであることの大いなる幸せを感じさせてくれます。


実は、だいぶ前にも書いたことがことがありますが、ジャパニーズフュージョンにどっぷり浸かって育った自分は、楽器の世界のNo.1はYAMAHAであり、それ以外のベースを手にすることはおよそ考えられなかった時代があります。また、5弦をはじめて手にした頃(85年くらい)は、多弦じゃなければベースじゃないみたいな感じに思っていた時期もあります(恥)。そういうバックグラウンドを持って育つと、おのずFenderは「食わず嫌い」的な感じになってしまいます。「なんで僕は今まで、こんな素晴らしいベースを手に取ることがなかったんだろうか」って、今、素直にそう思いながら、Fender JAZZ BASSを爪弾くシアワセに浸っています。