3本のベース | ベーシストとエフェクター

3本のベース

roscoe_thumb_yamaha


たまたま、家に転がっているエレキベース3本をケースから同時に出したので、ちょっと並べて写真を撮ってみました。ROSCOE SKB3006、WARWICK THUMB BASS 6st FL、YAMAHA RBX-6JMです。


ROSCOEはメインで、サムベースはフレットレスのメイン、YAMAHAはスタジオ練習用に友人に持ってきてもらう「預けベース」(ゴメンね・・・)にしようと思って、先日中古購入したものです。(現在の預けベースのIBANEZ SR406はフレットレス化しようと思っています。)


さて、3本のベースを同時に出して弾いてみると、改めてそれらの設計思想とか、製造のプロセスとか、そしてその結果が演奏性やサウンドなどに良く出ていることがわかります。


サムYAMAHAに共通している点は、量産製品であるという点です。サムは量産ハイエンドと言われていていますし、YAMAHAも定価ベースで10万円台半ばで決して安価な部類のものではありません。YAMAHAのトップ材のフギュアドウッドの薄さにはある意味感服しますが、いずれも使用している材を含め、楽器としてとてもキレイな仕上がりを見せてくれます。ただ問題は楽器としての仕上げ精度。


ある程度高めの弦高であれば問題は表面化しませんが、弦高を下げていくと、セッティングの生命線と言えるネック精度の難が表面化します。従い一定のレベルを超えると、特定のフレット位置でビビったり、あるいは特定の音程だけ極端にサスティンが短くなったりします。元々オリジナル状態でフレッテッドだったサムベースも、同様の問題がありました。噂とは違い、ネックは結構強くて環境変化で状態が変わることはなかったのですが、あまり精度が出ない状態で固まっている、という感じでした。で、たまたまナットが壊れるというアクシデントがあり、この際フレットの摺り合わせを同時にしようと思ったのですが、結局フレットレス化することにしました。リペアからあがってきた際に、リペアマンからは「ネックの状態そのものはとても安定していたので、低音弦側のローフレット部とハイフレット部の指板を結構削りました」というコメントを頂きました。なので、フレットレス化しないという選択をした場合は、かなりのフレット摺り合わせをしないとベストなセッティングが出なかったのかも知れません。


YAMAHAも同様です。ROSCOEと同じ35インチスケールで、鳴りそのものはとても良く、ヘンな味付けのないあっさりとしながらもYAMAHAっぽいサウンドですが、リペア前のサムと同様、極端に弦高を下げると、ネックが付いてこれません。トラスロッドが2本搭載されていて、セッティング上ネックはかなり自由度高く設定できますが、フレット打ち込みの精度に量産品の限界が出ているような気がします。


一方のROSCOE。音は、キレイで、どっしりしてて、繊細で、fatで、相矛盾する要素をバランスよく内包しており、文句なし。加工精度は、さすがに完全ハンドメイドという感じで、ネックはいわずもがなで、フレットの1本1本にも神経と血管が通っていると思えるくらい、仕上げ精度が高いです。どんなに弦高を下げても、妙なビビりは出ないですし、鳴りが悪くなることもありません。完璧な仕上げで、その状態も安定しています。日本の売価設定はいささか高すぎるかも知れませんが、このセッティングのためなら、この値段でも高くないと思えてきます。弾けば弾くほど、わずかな差なのでしょうが、量産品との差が感覚的にどんどん大きくなってきます。


昨今、一昔前では考えられなかったような低価格で、エキゾティックウッドを使ったり、フィギュアドトップ仕様やスルーネック仕様、名の通ったブランドのPUやサーキットを搭載した多弦ベースがリリースされたりしていますが、改めて、高価な楽器(全てではありませんが)との差は、マテリアルやスペックにあるのではなく、実際に触れてみないと分からない絶対的な仕上げ精度の高さにあると思うわけです。