弦について : その1 | ベーシストとエフェクター

弦について : その1

ベーシストに限らず弦楽器奏者の永遠のテーマである「弦」について、お話するというよりは、皆さんの状況を是非教えて頂きたい、という気持ちで問題提起をさせていただきます。

ご存知のように、ベースにとって弦はもっとも交換サイクルの早い消耗品であり、弦の振動と、その振動をトリガーとした様々な物理的な動きが、PUというマイクを経由して電気信号になり、音波として出力される訳です。弦楽器以外にも、消耗品が本体の特性に決定的な影響を与えるもの、たとえばクルマやバイクのタイヤがそうであるように、弦も、楽器本体と相まって、そのキャラクターに多大なる影響を与えます。そんなこともあり、今回はちょっと弦について考えてみたいと思いました。

まずは、弦に関連して、サウンド全体の構築や演奏性に影響を与えそうなファクターを片っ端から拾ってみましょう。

①材質

代表的なのが、ステンレスとニッケル、クローム。比較論で言うと、ステンレスはブライトで長寿命、ニッケルはパンチーでステンと比較すると若干死ぬのが早い、クロームはその中間あたりでしょうか。あとは、5年ほど前からコーティングされた弦が出回っています。これは寿命・触り心地のみならず、音にも影響を与えていて、やはりノンコートに比べると、張りたての時の新鮮な感じがありません。ただ、弦の素材だけでキャラガ決まるものではなく、ナットやフレットの材質も、これに影響してきます。特にスラップの場合は、弦をフレットに叩きつける訳ですから、フレットと弦の材質の相性がとても重要なファクターになってきます。また、すべからく弦は純粋な素材で出来ている訳ではなく、ステンレスやニッケル、クロームといった材質を基材として、様々な材のハイブリッドです、音に対する影響もさることながら、フレットへの攻撃性・侵食性にも留意が必要でしょう。

②ゲージ

これは、演奏性にもとても大きな影響を与えるファクターと言えます。6弦を前提として、0.の部分を省略すると、ミディアム:30-45-65-85-105-125、これを挟む形で、べヴィ:32-50-70-90-110-130、ライト:28-40-60-80-100-120という感じになりますが、6弦ベースでこのゲージのセットというのはほとんどなく、メーカーによって高音弦と低音弦のゲージの組み合わせが様々であり、いろいろと個性が出てくる部分です。演奏性という部分では、ゲージが細いとテンションがやわらかくなるので、指へのフィジカルな負担が少なく早弾きに向いていると言われます。べヴィゲージは逆に、太い分、サウンドも骨太になるということのようです。ただ、自分は、この僅かな違いを指で感じ取ることはできますが、音が細い・太い、という部分にはそれほど影響があるとは思っていなくて、材質と相まって、テンションの緩急によって音の細い・太いが決まるような気がします。

③形状

形状といっても、いろんな部分の形状があります。まずはコアのピアノ線。これは一般的に円形とhexa(正6角形)があります。音に与える影響は、自分的には未知数ですが、一般的には全て機械(自動・手動はありますが)で作られるため、hexa芯の方が丸芯に比較して外巻線を巻いた際の食いつきが良く、ピッチが安定すると言わているようです。また、hexa芯の方が丸芯に比較してテンションがやわらかめといわれることもあるようですが、これは太さの問題のような気もしますが、計測をした訳ではないので詳細は不明です。また、形状の範疇に入るものとして、外巻線の形状もあります。断面が丸い外巻線を巻いたものはラウンドワウンド、フェットゥチーネのような外巻線を巻いたものはフラットワウンドと呼ばれます。フレッテッドはラウンド、フレットレスはフラットを使うのが一般的ですが、フレットレスでよりエア感を演出するためにラウンドを使う方もいますし、よりメロウな音を求めてフレッテッドにフラットを使う方もいます。また、ROTO(だったかな?)は、ラウンドとフラットの中間的な特性を狙って、外巻線が半円形で半円部分が芯線側にして直径部分が外側を向いた巻かれたハーフワウンドなんていうものも作っています。

④スケール

一般的には、ベースのスケールに合わせて長さのバラエティがあります。ショート・ミディアム・ロング・スーパーロングといったところでしょうか。ベースの世界ではFENDERスケールがデファクトスタンダード的な部分もあるので、ロングスケールが一般的です。ただ、長短によって、材質や芯線の太さ等が変わる訳ではないのに、出荷量の少ないロングスケール以外は、若干高値で流通してます。スーパーロングについては、ペグ配列によっては、ロングでは長さが不足する可能性があるので注意が必要ですが、ショート・ミディアムは一般的にはゲージさえ好みがあえば、ロングを代用することで事足りるケースが多いようです。

⑤触感

材質あるいはコーティングに起因するものですが、自分にとってはとても大きなポイントです。弦の上で指をスライドさせた場合、引っかかりが気になるところですが、あまり抵抗がなさ過ぎるもの使いづらい部分があります。弦を張った方向への摩擦抵抗は、ニッケルはやや滑らかでステンレスはちょっと強め、コーティングはすべすべという感じでしょうか。ここも大きく好みが分かれるところです。また、相対的に、新しい弦の方が摩擦抵抗は大きく、使うに従いこなれてきます。

⑥張り方

これは、弦そのものではなく、張り方の問題です。ペグのポスト部分にまき付けるバッファ部分が多ければ多いほど、同じゲージでもテンションが高くなるといわれています。逆も、しかり。よって緩めのテンションが好みの場合は、ポストへの巻き量を極力減らして、ポストから外れない程度のギリギリまで短くして張るのが良いようです。また、ヴィジュアル的な効果を狙ってか、インテンショナルに先端をハネさせて無造作に張るケースもありますが、この場合は視覚効果と引き換えに、チューニング精度が落ちることを覚悟する必要があるようです。

⑦ブランド・価格

これも様々です。日本の除くアジア圏で低価格で製造されるものもあれば、欧米でハンドクラフトされているものもあります。ハンドクラフトものといっても、職人が芯線に手巻きしている訳ではなく、機械操作をコンピュータに任せて自動とするか、人間が確認しながら手動でやるか、の違いです。弦と言う単純なものでも、ハンドメイドにはハンドメイドの良さがやはりあるようですが、自動で作られたものの精度も格段に上がってきていますので、人件費をかけた分だけよいものが作れるか、というと、必ずしもこの辺は比例関係にはないようです。ブランドとしては有名プレーヤーを上手くエンドースメントしたマーケティング展開が昨今盛んに思います。特に、新興ブランドは、品質もさることながら、この辺のマーケティング戦略でのし上がってきた部分は否定できません。価格もまさに様々で、価格と品質が必ずしも比例関係にはないことは言えますが、やはり4弦セットで千円を切るようなものは、寿命、ピッチ安定性、質感、品質のばらつき分布の面で不具合を生じるケースが多いと感じます。

⑧その他

まあ、まだまだいろいろあります。バブルボールエンド、両端の保護糸の有無、ブリッジ部分の芯線の露出有無、太弦を主としたテーパー形状等々・・・


とにかく、いろいろとあって、弦の選択は迷いに迷った挙句、いまだにコレ、という決定打が見出せずにいる、と言うのが現状です。現在、メインのサムに張ってあるのはDR HI-BEAM mid、サブのIBANEZに張ってあるのはELIXIR Nanoweb。当然、最高に満足している訳ではなく、たまたま今それを使っている、というだけです。

次回は弦の選択に当たって自分が重要視するファクターについてお話したいと思います。