5弦ベースと6弦ベースは延長線上にあるか? | ベーシストとエフェクター

5弦ベースと6弦ベースは延長線上にあるか?

今回は、自分の実体験を通じて、多弦ベースに対する認識についてお話をさせていただきます。

自分がエレキベースを始めて手にしたのは、それこそ今から23年も前のことです。無論、当時はFENDERのコピーモデルのパッシブ4弦という、バリバリの王道。でも、5弦にスイッチしたのは意外と早く、ベースを始めて4年の時でした。リリース間もないIBANEZの廉価版5弦モデル(それでも高校生にとっては高価)でした。

でも、4弦→5弦(Low-B)のコンバートは、正直言ってほとんど違和感がありませんでした。機種にもよりますが、弦間ピッチが若干狭くなったり、重量が重くなったり、ネック形状が変わったり、いろいろと細かい違いはありますが、根本の部分では最低音域が下に4度広がるのみ、というイメージで、自身のプレイスタイルの基本は全く変わりませんでした。

ところが今年の年明けに5弦(Low-B)→6弦へのコンバートし、当初はただ単に弦が1本増えて高域側に4度音域が広がるだけだろう、と思っていましたが、弾き込めば弾き込むほど、このコンバートは4→5のコンバートとは全く異質のものであることを思い知らされています。

まずは、4弦→5/6/7弦(多弦)のコンバートにより、プレイヤーが受ける影響を大別すると2つに集約されると思っています。

①演奏性

弦が増えたり、弦間が狭くなったり、ネック幅が広がったりすることによって、フィンガリングに影響が出たり、スラップで間違った弦を叩いたり、G弦を思い切りプルできなくなったり・・・ という物理的な相違による影響です。

②インスピレーション

新しい道具に接し、最初は前に持ってた道具の延長線上で使おうとするが、そうするうちに、何かのきっかけで、前の道具との違いを利用して、前の道具ではできなかった、あるいは現実的に困難であった、何か新しいことをやってみよう、というインスピレーションをプレイヤーに与えることによる影響。

①の演奏性に関しては、自分のケースでは5弦(Low-B)が当てはまります。人間は慣れる動物で、個人差はあるものの、この類の相違にはすぐに慣れてしまいます。下4度が広がった、ということで、浅はかにもテーマ部でLow-B弦のみをやたらと使うベースラインを作ったことがありますが、これはインスピレーションという類のものではなく、単なる悪趣味ですね(笑)

ところが②のインスピレーションについては、自分の6弦ベースへのスイッチが、まさにこのケースに当てはまると思っています。もちろん5弦同様、上に1弦増えてスラップがやりにくいな、と最初は思いましたが、こんなものは30分で慣れてきます。慣れてくると、今度は、フィンガリングの容易性を活かして、5弦だと難しかったフレージングが6弦だとやりやすいことに気づいてきます。ここまでは5弦でも、無理をすれば物理的に何とかこなせます。

そして次に、このHi-C弦を活かすためにはどういうプレイをすべきなのか、と考える訳です。Hi-Cのハイフレットは、テナー・ピッコロの領域に入って行きまので(しかもサムベースは26フレット)、結果は明らかで、ベースの役割を拡大解釈して、他のパートとぶつからない範囲で、よりメロディアスな要素を求めることになります。自分は元来ベーシストであることもあり、この"ウタゴコロ"が不足しているところが、これからの大きな課題ですが、同時に新しいことにチャレンジする大きな楽しみもあります。

自分の場合は買った後に気づいた訳ですが、まあ、一言で言うと、6弦以上の多弦は、Low-B5弦とはまたちょっと違ったアプローチで臨む必要があり、それを意識すれば、必ず前進がありそうだし、逆に、新しい目的意識がないとせっかくの多弦の意味が半減してしまう、という風に思う次第です。

もちろん4弦であっても、多弦ベースがプレイヤーに与えてくれるインスピレーション要素を難なく取り入れて弾きこなしている方も多くいます。でも、自分のような凡人プレイヤーの場合は、少なからず、楽器から受けるインスピレーションに頼らざるを得ない部分もある訳で、6弦ベースは、自分のプレイの可能性を広げてくれるインスピレーションを、確実に与えてくれています。音域が広がったという物理的なメリットのみならず、何か、別のものを一緒に持ってきてくれている気がします。これに応えるべく、もっともっと弾き込まないと・・・