アップライトベースのピックアップ考察 | ベーシストとエフェクター

アップライトベースのピックアップ考察

先日、エレクトリック・アップライト・サイレントベースについていろいろと書きましたが、今回は、そのサウンドを電気信号に変える要であるピックアップについて考えてみたいと思います。(写真は、ピエゾPUの定番、FISHMAN BP-100)今までに自分が使ってきたものに付いていたもの、使ったことがあるものを羅列すると、大きく分けて3つあります。

①ピエゾ

もはやアップライト・ウッドベース用PUの定番、圧電素子といわれるもので、振動・圧力を電気信号に変換するピックアップ。つける場所は様々で、駒のトップに圧着するもの(ex.FISHMAN)、駒のウィングに挟み込むもの(ex.UNDERWOOD)、駒の足の間に橋状につけるもの(ex.POLYTONE)、駒下に敷きボディと挟み込むもの(ex.Realist)、さまざまです。ただ1つ言えるのは、拾う場所によって音質が大きく変わり、それぞれがそれぞれの想定した場所につけることで最大パフォーマンスを発揮できるようにようにチューニングされています。

②マグネット

エレキベースでも使用されているPUの王様。弦がPU上の磁界を揺れ動いて発生する磁場の動きを電気信号に変換するピックアップです。当然、音はエレキっぽくなりますが、そのバランスの良さや音の作りこみのしやすさには一夕の長があります。ただ、磁力を使うものであるため、弦は金属弦に限定され、ナイロン・ガット等は基本的に使えません。

③マイク(コンデンサ)

ダイナミックとコンデンサがありますが、楽器用は一般的にはほとんどがコンデンサ。自分が使っていたSCHERTLERのように駒のウィング部の穴に挟み込むというスタイルはどちらかというと例外で、一般的にはサウンドホールのところに設置して、ホロウボディが鳴らす音をそのまま拾います。

製品によって特徴はマチマチですが、あくまでも一般論として、ピエゾは「高域型」、マグネットは「低域型」、コンデンサは「フルレンジ型」という分類ができると思います。

単体で使用されるケースでは、プリアンプの使用を前提としたピエゾ単体が圧倒的に多いです。最近ピエゾの性能がものすごく良くなってきていることもあると思いますが、あたかも上質なマイクで拾ったかのようなナチュラルな音を再生するものが出てきていますね。あと、楽器のボディ構造(ホロウ、ソリッド)との相性による違いもあり、一概にどれが良いとは言いにくいですが、ホロウ構造に限って言えば、アフター品ではRealistの評判が高いようです。また、単体品としては販売されていないと思いますが、NS DesignのPolarは、ピチカートとアルコの振動方向に合わせた拾い方の調整が出来るので、単体での販売が望まれるところです。いずれのPUも開発にNed Steinberger氏が絡んでいますので、その計り知れない才能に感服する次第です。尚、ピエゾは一般的に出力が低く、インピーダンスが高いという特性があるので、ゲインコントロールとインピーダンスマッチングという観点でプリアンプとの組み合わせ使用が必須といえます。

あとは単体使用ということでは、自身の経験から、SCHERTLERのコンデンサマイク+専用のAクラスプリアンプは絶品です。マイクなのでハウリング処理をする必要はありますが、全域に渡ってナチュラルに音を拾ってくれます。ピチカートでもアルコでもいけますが、ピチカートしかしない方にとっては、もうちょっとピチカートよりのセッティングにして欲しいと思われる部分もあるかも知れません。あと、ハイが若干絞り気味なのでピエゾと組み合わせると、その威力をもっと発揮するものと思われます。

複数ピックアップを組み合わせた使用では、ピエゾ+マグネットが一般に多いですね。ピエゾで弦のタッチ感とエアー感を拾って、不足する低域をマグネットで補うタイプ。ピエゾ+マイクは、マイクで全体のサウンドを作って、カチカチといったようなウルトラハイをピエゾで補うタイプ。マグネット+マイクというのは、見たことがありませんが、感覚的にセット使用のメリットがあまりなさそうです。

こんな感じで考えると、やはりPUを決める上でもっとも重要なのはボディの構造だと思います。最近はボディの構造も結構多様化してきていますので、あくまでも私見ですが、以下の組み合わせがベストプラクティスなんではないかと思います。

○ソリッドボディ → ピエゾ or ピエゾ+マグ
○ホロウボディ  → マイク or ピエゾ or マイク+ピエゾ


でも、ホントにこれは一般論で、ボディ構造・PU特性・好みによって千差万別だと思います。最終的には、とにかくいろいろと試して、試行錯誤することしかないんだと思います。これも、楽器を演奏する上での楽しみの1つですからね。