悪趣味?それとも | basser-t-0407さんのブログ

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こんばんは。


ちょっと風邪気味、いささか鼻声で早めのパ◯ロンを服用している者です。どうか熱発しませんように…コロナのせいで普通に医者にはかかれず、発熱外来に行かざるを得ないので(行ったら却って具合が悪くなりそう)。


さて、前回長くなり過ぎて辿り着けなかったネタをば。

12月7日夜TBSでオンエアされた「ワールド極限ミステリー」という恵俊彰と高島彩が司会のバラエティ番組、いわゆるトンデモネタを色々取り上げてました。

まずはUFO映像とされるもの。ちゃんとした解析・検証を加えないのはお約束(笑)。

得体の知れない韓国人に「ユーフォーを呼ばせる」として屋外との中継を繋ぎ、夜空を見上げて騒いでもいたけど、そも生中継じゃないんだから、きちんと調べた上でその結果も報告しなさいっ!する気ないだろけど。

メキシコの「宇宙人のミイラ」とやらもそう。しかるべき調査をすれば出どころは判るでしょって。


このテの「謎のミイラ」って日本のあちこちのお寺や神社とかにもあって(河童とか竜とか人魚とかミノタウロスみたいな「くだん」とかね)、敢えて分析してもらうと材料や成り立ちがバレちゃったりもするから(過去かなり「犠牲者」が出ているw)、お寺さんとかはそういう調査を大概許可しないのね。でもそれで参拝客呼んでるならそれは詐欺だよなぁ。


さらに番組が畳みかけるネタが、メキシコの大聖堂の聖なる少女のミイラ。これまたメキシコ、これまたミイラですよ、皆さん(笑)。この少女のミイラが目を見開いた瞬間の映像というのを紹介してましたが、それへの検証は一切なし。予想どおりだな。

余談ですが、かつて話題になったイギリスの「ミステリーサークル」、ブームのきっかけとなる悪戯をしたジジィ2人組がタネを公にし、地元主催で「誰がうまく描けるか」ってな大会が開かれるようになってからも、日本のテレビじゃ「これは人間技でない」とか「倒れた麦の分子構造に異変が起きている」とかやってた。アカンでしょ、これ。テレビ屋(局)って連中はほんっとにもう…。


恵の番組に戻ります。

今回番組では、イエティ(雪男)のひ孫の女性を訪ねそのDNAを調べた、などという素っ晴らしいネタを振ってきたのね。

このイエティネタ、オイラ不覚にも知らなかったんだけど有名な話らしく、1850年代、ロシアーグルジア間コーカサス山脈で発見された半人半獣の女性「ザナ」が実はイエティのメス(じゃ雪女かよ、おい)で、飼い主の男にお手つきされて子を産み、さらにその2代下ったひ孫にあたる世代の人物が現在ジョージア国に住んでいる、ってんである。とりあえずヒマラヤ産ではないのね、なぜか。

↑ザナのポートレイトとされるもの。写真とも絵ともつかないが、うーむ怖い。

で、そのひ孫だという女性のDNAを調べたところ、通常の人類とは異なる部分があるとかどうとか言ってたけど、調査機関やそのデータのきちんとした開示はない。46年前の「オリバーくん騒動」を思い出すなぁ(ヒトとチンパンジーの中間の数の染色体を持つ謎の類人猿などと喧伝されたが、きちんと調べたらただのチンパンジーだった)。

オイラがネットで漁った限りでは、ザナはアフリカ黒人女性、つまりヒトって結論付けられているようです。


この番組を見ているとき、昔(たぶん震災よりも前)この類いの番組で見た「中国湖北省の野人」というのがオイラの記憶によみがえってきた。どこの局の何という番組だったかはまるで記憶にないんだけれど、おそらく番組で買い付けて流したのであろう映像は鮮明に憶えてる。今は便利です、検索したらすぐにヒットした。興味がおありの方はYoutubeかニコ動で御覧下さいませ。

その買い付けて流した(おそらく似非)ドキュメントというのは、「湖北省の山あいには人類とは種を異にする巨大な体躯を持つ野人が棲息する。その実態を明らかにすべく結成された我が中国の調査団は、人里離れた湖北省の険しい山に野人を追う」、とノリがまったく「水スペ川口探検隊」なのである。出だしから悪趣味である。

そして一行は首尾よく探し求める野人と遭遇し、映像に収めることができた、というのであるが…その「野人」とはあっきらかにヒトだった。小頭症でかつ巨人症の患者であろうとネット上の記事ではいわれている。おそらく知的障害を抱えているせいで親に棄てられ、全裸のまま洞窟を棲家として日常を過ごし、近隣の村人に食べ物を与えられたりして凌いでいるらしいのであった。この「野人」の映像、2016年の「たけしの超常現象スペシャル」でも流したらしい(たまたまオイラは見逃した)。すっげぇなテレ朝、障害者をUMA扱いだぞ。コンプライアンス上問題なかったのか?「テレビのチカラ」の局だから確信犯なんだろうな。


御存知の方も多いでしょうが、小頭症は多くの場合知的障害を伴う。昔(欧米で)、この病気を持って生まれた子は、親にサーカスへ売られ、サイドショウの見せ物として生きてゆくということが往々にしてあったそうである。映画「フリークス」(1931年米MGM、監督:トッド・ブラウニング、日本公開時タイトル「怪物團」)には3人の小頭症の人物が登場する。

そこまで思い出して、関連するフレーズでまたネットを漂っていると、とある「サブカル系」サイトに辿り着いた。

取り上げている事象、事件、人物、組織等々により構成される内容は、かつての「鬼畜系」に親和性のある宝島社や洋泉社の出版物のような「悪趣味テイスト」。

しかしながら、サイト全体とは何故かトーンが違うそのうちのひとつのページがオイラの眼を射った。


「死体の展示が物議を醸し閉幕に追い込まれた『人体の不思議展』」。

これって何だ?記事を読んでいくうち「そうだったのか」とまたまた自分の情弱振りに今更気付かされることとなる。


この騒動、そもそもは1995年の上野は国立科学博物館の特別展、「人体の世界」から始まる。

養老孟司の友人でもあるというドイツ人解剖学者グンター・フォン・ハーゲンス博士が考案・開発した(他の生物も含むが主として)人体の標本、それは死体の脂肪と水を樹脂に置き換え乾燥させることにより、腐らせることなく生前に近い状態に保てるようにした画期的なものであった。

この特別展では、その標本ーホルマリン液に浸かったガラス越しのものなどではない「本物の人間の死体」を、無臭の状態で見学者の眼前、同じ空間に陳列したのである。それまでにも通常展示されていたミイラや干し首(しかもガラスケースに入ってる)とかとはもちろんまったく別ものなわけでありまして。公開前に写真週刊誌のカラーページで取り上げられたりもし、相当な話題になっていた。

かくいうオイラも、家族全員で上野まで見に行った。図録も購入。

(↑この画像はネットからの借りもの)

当時我がカミさんもかなり興味を抱いていて、いまだに「プラスティネーション」っていうその標本作製技法の名称を憶えているほど。

開期の終わりに近い週末に行ったもんだからやたら混んでて、あまりゆっくりとは見ていられなかったけど、やっぱりそのインパクトは強烈でしたねぇ。特に皮膚を剥がされ内蔵が剥き出しになった全身像とかは。小中学校の理科室にあった人体模型のモノホンのリアル版なんである。股間のペニスまで縦に割られていたりもして。

人体の部品である内蔵のあれこれはもちろん(喫煙者の肺は文字どおり黒ずんで灰色になることを目の当たりにもした)、ヒトひとりの全身を縦方向と横方向それぞれに細かくスライスした標本もあった。胎児と一緒にスライスされた妊婦まで…。

キャプションでは、これらの標本が医療・大学関係者の献体によるものであるってされてたけど、さすがに全部がぜんぶ献体ってことはないだろうと思ったのを憶えてる。

夏目漱石の脳髄(これはホルマリン標本)も展示されてた。文豪は腑分けされちゃってたのね。頭の皮を剥がれ、頭蓋骨を切り開かれてらしたとは…衝撃です。


とまぁ、いろいろと感じさせられる特別展でありました。普段ぼんやりと過ごしているオイラも、改めて目の前に死というものを突き付けられた気がしたし。下世話な好奇心が大部分での入館だったにしても。

このイベント、当時の入館者も記録的な数字となった模様。日本開催を皮切りにその後世界を廻ることとなったのだそうである。


さて、この「人体の世界展」の成功を見、「こいつぁカネになる」と興行に仕立てた連中がいた。

そのうちのひとりは、なんと養老孟司の遠戚だという。彼らはハーゲンス博士と組み(=標本を借り)、人体標本の展示で日本全国を行脚する。早くも1996年大阪での開催から始まったその名は「人体の不思議展」。主催者が違うから名称も変わったのね、今にして思えば。

当時のオイラは「また同じ展示を開催してるのか」ってな認識でしかなかった。そういう人、多かったはず。

この頃って、ハーゲンス博士の解剖実演を収めたDVD(元々は英国のテレビ番組、養老孟司推薦)もリリースされたりして、不思議なブームが起こってたな〜。悪趣味なオイラは借りてきて見ました。


一方、順調に全国を回っていた巡業だが、興行主がハーゲンスへのロイヤリティをケチって訴えられ、標本を返還させられてしまう。

だからといってその旨味を忘れられない彼らは、ハーゲンスの提供によらない同じ技法(特許を侵害するパクリである)による人体標本を調達、展覧会を存続させることとなる。この辺りから一気に話はキナ臭くなる。


そもそも御本家ハーゲンス自身、人体標本の順調な生産を図るために、本国ドイツではなく、「死体の安定供給が可能な(どういう意味なのだろう?)」中国大連に大規模な標本への加工工場を設けたというのである。これはとりあえず合法らしいのだが、この工場で働いていた中国人がその技法を盗んだうえでハーゲンスとは関わらない死体加工ビジネスを起こし(彼の国お得意のパターン)、ハーゲンスと袂を分かった「人体の不思議展」の興行主に標本の提供を始めたらしいのである(そのパクリ死体加工工場は誰が立ち上げたのだろうか、と思ったりもする)。

そのため、ハーゲンスの名を冠さなくなった「新・人体の不思議展」では「プラスティネーション」という技法名はもちろん謳えず、「プラストミック」という造語を用いている。技法としてはまるで同じものらしいんですけどね。


そしてよりインパクトの強い標本を増やし、「新」の字を外して元の名前に戻したりもした「人体の不思議展」であったが、やがて死体の出どころへの疑惑が取り沙汰され、問題視されるようになる。

これはハーゲンスの標本も一緒なんだけど、大連で死体が「安定供給」されるのは工場にほど近い刑務所や公安施設から、なのだそうである。そして死体には中国で弾圧されている法輪功信奉者(学習者)が数多く含まれている、とも。そうなると御遺体が本人の意思に基づく献体なのかどうかはかなり怪しくなってくる。ここらへんを突つかれ、また標本の展示自体が墓地埋葬法や死体取扱規則に抵触するんじゃないかという議論や告発する動きもあったことから、とうとう2011年1月京都での開催を最後にこの展示は閉幕となってしまった。運営していた母体の会社も既に解散、現存していないのだ、と。閉幕までの15年間、36都市で650万人の入場者を動員したというのだから、大したイベントだったのだと感心する。

人間の下世話で悪趣味な部分を刺激したのはたしかだけど、ただそれだけではなかったとも思う。


だいたい、オイラは見たことないけど大昔の衛生博覧会とやらだってとどのつまりは見世物小屋だったっていうし、動物の標本だって剥製だって死骸(死体)だよね。

それがヒトとなると特別扱いで、極力見せまいとする。隠す。ヒトの、動物としての死からは目を逸らしたいのか。それは本能的な恐怖からか。

オイラには解らない。でも残り時間がさほど多くないだろう身としては、死というものをたまに真剣に考えることもある。

あの展示が「生と死」を考える機会となった人、決して少なくはないと思うんだけどなぁ。


でまた思うのは、中国も含め東南アジアにおける生体移植の為の臓器売買(特に子供についてのそれ)なんてのは、大連の死体調達どころでなく抱えてる闇が深いのではなかろうか、ということだったりするのであります。