イトウは「日本最大の淡水魚」「日本三大怪魚」「幻の魚」「釣り人の憧れの魚」とか言われることが多い。かつては青森と岩手にも生息していたが絶滅して今は北海道のみとなった。しかもイトウの仲間はアムールイトウ(タイメン)、ドナウイトウ、チョウコウイトウ、コウライイトウがいるというが、この中で降海するのはニホンイトウだけだという。このイトウという魚は絶滅危惧種になっているが養殖技術が確率された今朱鞠内湖で漁協により放流されている他に管理釣り場でも釣ることが出来る。さらに地方の料亭では料理で出されているところもある。多くの人が思っているよりイトウという魚と出会える機会は多いのだ。かつて故開高健氏は著書「私の釣魚大全」の中で「イトウは巨大な顎の持ち主で、口は大きい。小さいけれど鋭い、切り裂くような歯をしていて、半ば伝説的にではあるが、川の行く手をよこぎるやつはヘビであろうとネズミであろうとカエルであろうと、何でも呑み込んでしまうといわれている。」と。また同著書の中で画家の故佐々木栄松氏は「昭和36年と昭和37年には、釧路川と雪裡川の三か所で推定1.5mの大物にっ出合ったことがあるという。いまでも大湿原と根釧原野のどこか暗い淵にそういう神居がひそみ棲んでいるのではないかとの想像がほとんど確信となって血をかきたててやまないという」という話が紹介され、さらに同著書で「3年かかってやっと一本あげたとか、5年かよってまだ顔を見たこともないというような話をたっぷり聞かされた。」と故開高氏は当時のことを著書で述べている。現在確かに管理釣り場でもイトウと会える場があるし水族館で展示しているところもある。昔と比べれば身近にはなったが本当のイトウ、つまり自然下のイトウと出会うのは簡単ではない。現在イトウが生息しているのは北海道のみだが、その北海道でも生息するのは11河川だという。さらに近年イトウが産卵のため遡上する支流域が開発にさらせている場所もあり生息地、生息数は今後も減っていくものと思われる。最大の原因は開発によるものだが、その一方で漁業資源にならないこの魚が漁業資源の対象となる魚を捕食する半ば厄介者扱いされてきたことの影響も少なくないと思う。漁協関係者や従事者にとっては金になる、ならないでしか魚を見ない。同様な扱いはウケクチウグイにも見られるようだ。かつて2.1m重さ26㎏の個体が捕獲されイトウは「日本最大の淡水魚」「最大で2mになる」とか言われるがその大きさには疑問を持たざる得ない。信憑性がないのだ。1953年オビラメの会会長の草津清作氏が尻別川で釣り上げた記録は1m57cmがあるというが証拠(写真や魚拓)がない。確実な記録としての最大は1986年12月13日尻別川で山下重雄氏によって釣り上げられた130㎝重さ30kgである。いずれも2mには程遠い。しかし今でもイトウは釣り人の「憧れの魚」であり「幻の魚」である。プロの釣り師である折本隆由氏が以前テレビの釣り番組でバスプロの田辺哲生氏と風連川でイトウ釣りをして、この時見事イトウを釣り上げ「幻を釣ったぜ!」と言っていたのを覚えている。また今年の春先にNHKラジオの特番で釣りに関する番組があったのだが、その番組の出演者が一番釣ってみたい魚は?にイトウを挙げていた。イトウはやはり釣り人には特別なのだ。釣り人の中には宮崎のオオニベではないが、このイトウを釣るためわざわざ本州から通う人もいるのだ。おそらく2mのイトウは存在しなかったとのではないかと個人的には思う。しかし2mのイトウは確かにいた、そして今もいると釣り人は信じているし信じたいと思っているのではないだろうか?。それは所詮り人の夢であり願望であっても。そこらじゅうにいて、大きくても70㎝のバスと違い生息地が限定され2mにはならなくても最大でメーター以上になる大物だ。釣り人の中に「いつかは釣りたい」と思っている人が多いはずだ。魚鬼(イトウ)はやはり釣り人にとって特別な存在なのかもしれない。

 

イトウ(フィッシュレプリカ)

イトウは日本最大の淡水魚とされ幻の魚と言われる。北海道のみに生息するため多くの釣り人にはそれだけでも遠い存在なのだが、この魚をいつかは釣りたいと思う釣り人は多いはずだ。イトウにはそれほど釣り人を惹きつけてやまない魅力がある。