昨日「AWAKE」という映画を見てきた。プロ棋士を目指していた少年が挫折し、一度は将棋からは離れたものの、将棋ソフトとの運命的な出会いがきっかけで、自ら最強の将棋プログラムを開発することになり、プロ棋士となったかつてのライバルと再戦を果たすという話である。結末は衝撃的で、複雑な気持ちになるものであったため、実際の電王戦(プロ棋士vsコンピューターの対局)を基に作られた話ということを知り非常に驚いた。



YouTubeの広告で流れてきたものを何となく見ていたところ、吉沢亮が演じる主人公が大学の学食で一人でご飯を食べている姿や、子供の頃「天才」と評された人間が成長するにつれて「普通」に成り下がっていく展開に自分と通ずるものを感じて見に行った映画だったが、ストーリーやキャラ設定は面白く、悲観的にならずに楽しむことが出来た。



しかし、将棋映画の難しいところは、将棋そのものが非常に難しいことである。作中では、主人公や主人公の作ったソフトが、初手で玉を動かすことが斬新な珍しい手であるとして印象的に描かれているが、幼い頃に少しだけ将棋に触れたことがあるくらいの僕にはそれがどれほど衝撃的なことなのかはわからなかった。他にも将棋の専門的な話で、理解できない部分がいくつかあった。



僕が触れてきた将棋は、作品の中で描かれているような、相手の数手先まで読むみたいなこととは無縁のものであった。その時その時でなんとなく良さそうな手を打つようなものだったが、パチっと良い音を立てながら置くのが楽しくて一時期家族揃ってとてもハマっていた。そんな我が家の「将棋っぽい遊び」には、我が家でしか使えないような技がたくさんあった。

よく使われていたのが、相手の見ていない隙に駒を動かし、素知らぬ顔で王手する「静かなる暗殺<サイレント王手>」である。相手が王手されていることに気付かないまま王とは関係ないところの駒を動かすと、次のターンで勝利することができる初歩的な技である。基本的には相手に気付かれるので、「くそー!バレたー!」とよく叫んでいた記憶がある。なんとも稚拙な駆け引きである。

また、相手が目を離している隙に、相手の駒の向きを逆にして自陣の味方にする「祖国への叛逆<ターンベトレイヤー>」も基本の技である。成功すれば大ピンチでも難なく乗り越えられる単純ながら最強の技である。ただ、これは「ズルすんな!」と普通に兄弟喧嘩になることが多かったので、次第に禁じ手となっていった。

ほぼ負けが確定した時に、将棋盤そのものを揺らしたり盤上の駒を撒き散らす「大地震<リトルブラザープンプン>」は、奥の手として1番下の弟のみが使うことが許されていた。駒を撒き散らした後、「勝った方が片付けろよ!」とブチギレる弟に対して、「分かった!強い方が片付けるんだね!」と煽るのが定番であった。結果的に喧嘩になるので、禁じ手とされたが、その後も弟が多用していた。

他にも、相手の持ち駒を奪ったり、駒を重ねて複数の駒の動きを体現できる最強の駒を作ったりしていた。



今こうして思い返すと、将棋の奥深さや魅力が何一つ発揮されていない遊びだったと思う。こんな僕でも楽しめる映画だったので将棋に興味がない皆さんも是非ご覧ください。



今回も読んでくれてありがとうございました。