ケラー盤ダリボル | Intermezzo ~幕間のおしゃべり~

Intermezzo ~幕間のおしゃべり~

しがない歌劇愛好家Basilioの音盤鑑賞録。
備忘録的に…

この音盤も随分前から存在は知っていたものの手にいれていなかったもの。たまたま見かけたときに手にいれやすいかどうかということが、こういうときは分かれ道になりますね笑


スメタナの自信作であったという『ダリボル』は捷国のオペラとしては録音は多いものの、所謂「お国」のメンバーではない演奏は珍しく、このほかにはシュピースが主役を演じたクリップス盤ぐらいでしょうか。それにしても捷色の薄い演奏だと思います。そしてここまで地方色がなくなると、なるほどヴァーグナーからの影響の大きさがよくわかりました。ローエングリンあたりとの関係が深そうに思います。ケラーはなんとなくダルい演奏になることもある指揮者ですが、オケの重厚な響きも緊迫したテンポも心地よく、好演です。


ダリボルはこのときにしか歌っていないというゲッダですがどうしてどうしてリリックでありながらも十分以上の質量を感じさせる声といつもながらのスタイリッシュさで、爽快なパワーのある名唱。先ほどの話ではないですが、彼のローエングリンはこんな感じだろうなとも(唯一歌っているヴァーグナーのはずです)。第2テノールのヴィーテクを演じるカーペンターもやわらかで厚みのある声。小さな役ですしもっと軽くて細い声で歌われがちですが、リッチで心地よいです。そして彼とペアであるイトカは恐らくここで唯一の捷国(かスロヴァキア)のキャストであるショルモヴァー。彼女が大変素晴らしいです。開幕すぐの登場アリアから全力投球の歌唱で、いきなりクライマックスが来たような気持ちにさせられるほど。思い入れが違う、という感じですね。ここまで彼女に歌われてしまうとヒロインのミラダを演じるクビアクはしんどそうですが、ここでは彼女も体当たりの歌唱を披露していて聴き応え満点です。恥ずかしながらタチヤーナやってたなーぐらいの認識だったのですが、これだけ歌えるならばドラマティックな作品での演奏を探したくなります。この人たちがこのテンションだから余計にヴァーグナーっぽいのかもしれない笑。低音も充実しています。ヴラディスラフ王のモンクは名前を聞いたことがあるような、ぐらいだったのですがこちらも渋みのある堂々たる美声。もう少し苦悩が出るとよいのですが、瑕疵と思います。牢番のベネシュにはなんとプリシュカ!これだけしっかりした声で歌われるととても軽んじられる人物には聴こえませんが、その分2幕のドラマが深まりますね。ブディヴォイを歌うフォスは流石にプリシュカには貫禄負けしている感じはなきにしもあらずですが、精悍で役にはまっています。


スメタナらしさを求めると?かもしれませんが、これはこれで立派な演奏だと思います。