まずガヴァッツェーニの指揮がお見事!この決して演奏機会の多くない作品をいきいきとした音色と闊達なテンポで鮮やかに描いていて、その魅力を十二分に引き出しています。
歌唱陣はいまのベルカント歌手の技巧に較べるといずれもたどたどしい部分があるのですが、そのマイナスを凌駕する圧倒的に充実した声の饗宴を楽しむことができます。今日これほどこってりとした声でベルカント作品を聴くことはできないでしょう。しかもおもったるくならない!(これはガヴァッツェーニの腕でしょうね)
まず見事なのは今回の目的でもあったカバリエ。ppを繊細に扱う歌手というイメージだったのですが、改めて聴くとそういった歌唱を裏打ちしているのは芯と豊かな響きのある強い声なのだと再認識した次第。ビックリしたのはカバリエの夫君のマルティ。結婚後に引退したと聞いていて、ちゃんと聴いたのは初めてだったのですが、輝かしい楽器を持った華やかな歌手です。やや金属的なクセはあるのでそこは好き嫌いでしょうが、程よい重さもあってすっかり気に入ってしまいました(^^)引退はもったいない......!カプッチッリはこの中でも一番転がしに苦戦しているようですが、それでも彼の重量感のある声と品格のある歌い口は得難いです。カバリエやマルティとの声の相性もあってか、特にアンサンブルでうまさを感じました。チョイ役のライモンディは贅沢ですね、流石にうまい。
そんなこんなでこの作品の古典的名盤と言えるのではないかと!