フォン=カラヤンの指揮はライヴらしいノリはありつつも全体的にはスタジオと同じように土臭さやアクの少ないもの。ここでは変に整いすぎた印象ではなく、露国の冷たさを思わせる。
期待のギャウロフは予想どおり知るかぎり最もいい声でのボリス。いつもながら圧巻のパフォーマンスで、狂乱の場や死の場なんかは声の魅力と豪快な表現が高次で結び付いている。ただ正直なところもっと凄いのを期待していたところはあって、DGやメフィストのような凄まじい惹き込まれ方はしなかった(いやアホみたいに贅沢なこと言ってる自覚はあるんだけど汗)。しかし、普通に平均点の高いときのギャウロフ(なんじゃそりゃ)。
むしろいいなと思ったのはマリーナを演じるユリナッチと、シュイスキー&聖愚者掛け持ちのシュトルツェ!ユリナッチはモーツァルトやR.シュトラウスを得意にしていた人で、実際その方面で悪くない録音もいくつか聴いてきたのだけれど、個人的にはここでの歌がベスト。ほのぐらくて厚みのある音色が、この下心丸出しの波貴族の娘にしっくりはまっている。シュトルツェという人も凄い人だというのは知っていて、オルロフスキーなど楽しませてもらってはいたのだけれど、藝達者ぶりに唸らされた。聖愚者の憐れっぽい歌もよいけれど、やはりシュイスキーの憎たらしさ!ボリスを追い詰めるところは、ギャウロフとがっぷり組んでいてこの演奏の白眉。
ピーメン役のボルイには大いに期待して、且つまたその声と歌の渋さには十分満足なんだけれども、最初のアリアのカットでかなり印象が薄らいでしまっているのが残念。マスレンニコフが偽ジミトリーをやっているのはおそらく珍しくて、なよっとしたキャラクターを面白く作ってもいるんだけど、彼はやはり聖愚者の方が向いてると思う。カラヤンのスタ録と同じくここでもランゴーニを演じるケレメンとヴァルラームを演じるディアコフはいずれも見事だし、ライヴのノリをプラスに活かしていて花丸。
スタジオと較べながら聴くのもまた面白いかも。