どんな作品でも、長編・大作ともなれば、「壮大なスケール」というものが要求される。
主人公がひとまず自分の身近な問題を解決するところから話が始まり、「本当の敵」を追う中で、どんどん規模が大きくなっていく、という仕組みだ。
RPGにおいては2部構成になっていることもしばしば。
たとえば…
<FF7>
「ミッドガル」までが1枚目の世界。
その後、「神羅」との戦いが「ワールドマップ」を舞台に展開。
しばらくは直線的に進めるところを進むことで、「世界の直径」が水平次元に拡張する。
ワールドマップが半分程度解放されたところで、飛空艇が登場。
このころにはエアリスが死んでしまい、物語を導く人物はエアリスからセフィロスに交代。
神羅の研究や古代種あるいはジェノバにまつわる歴史が垂直次元に展開することで、世界が立体的になり、複雑になる。
リメイクがミッドガル脱出までを分作の1本目としたのには、こういう世界拡張の順序から言って、必然性がある。
<DQ11>
これは結構分かりやすい。
①故郷の村から旅に出る
②デルカダール王国で「悪魔の子」として投獄され、最初の仲間とともに脱出
③ゆく先々で仲間と出会いながら目的地(命の大樹)の情報を収集
④船入手・ワールドマップ全域を移動できるようになる
⑤ラスボス登場と世界の崩壊
⑥仲間と再会する旅へ
⑦「空飛ぶクジラ」で空中の場所に行けるようになる
⑧ラスボス撃破でエンディング
⑨「時間」が過去へと解放され、裏ボスも登場。撃破で真のエンディング。
と、言うわけで、順番通りに世界の直径が大きくなる。
地理的な水平次元の拡張に、「時間」という軸を導入すれば、より複雑で壮大な(難解な/無理がある)ストーリーになる。
こうしてみると、「打倒すべき敵」がひとまず描かれ、そこにたどり着くために旅をすると世界が広がっていき、またその道中で仲間と出会い、パーティーが勢ぞろいして宿敵と対峙する…と、ここまではどんな作品にも共通している。
ある意味、ゲームである以上、1層目のお話までは通らざるを得ない道なのだ。
そこからどう展開するか、というところにそれぞれのシナリオの独創性が発揮されるのだろう。
1層目の終わりで実はすべてを俯瞰していた別の敵の存在が明らかになるとか、世界が崩壊するor異なる世界線が持ち込まれるとかいうのは、これまた展開の形式としては王道の類だ。
場合によってはそのまま直径を拡張して「宇宙」に突き進むこともある。
今回のテイルズオブアライズにおいても、それは変わらない。
①とある国の奴隷だった主人公が解放を目指して戦いを始める
②他の国も解放するために旅が始まる
③5つある国のうち3つ目までですべての仲間がそろう
④4つ目と5つ目で当初の目的はほぼ達成
⑤物語は300年前から始まっており、本当の敵は宇宙船で移動するような場所にいることが示される→2つ目のOPが流れる
こうしてRPG的な構造を他作品との比較で確認すると、本作は王道の代名詞ともいえるドラクエ以上に分かりやすい構造をしていることが見て取れる。
私としてはこういう単純さは、むしろ歓迎したい。
いきなり宇宙が出てきたが、実は最初からそれもわかっていたことで、特に混乱することはない。
物語のスケール=世界の直径、という理解で難なく腑に落ちる。
「ゲーム」という制約がある以上、どんなに整合性を追求しても無理な部分が必ず出てくる。
たとえばFF7では、肝心のラスボス・セフィロスの動機が、はっきり言ってよくわからない。
稀代の英雄が闇落ちした挙句、やけくそになって全世界を亡ぼそうとする、というのも意味不明。
仲間の数も多すぎて、いまいちどこに物語の軸があるのか見えづらかった。
今作にはそういう「危ない橋」を渡るようなことをしない、これはゲームのシナリオだ、と割り切った、ある種の潔さがある。
それでいいと思う。
王貞治と長嶋茂雄が「日本のプロ野球」の礎を築いたのと同様、ドラクエとFFは「RPGというエンターテインメントが存在する世界」の基礎を作り上げた。
テイルズはその後に誕生しているのだから、開拓者を目指す必要はないのだ。
むしろ、レジェンドが築き上げたRPGの伝統を律儀に守りつつ、その形式を別の形で「表現」することに特化した作品。
戦闘のアクション性や各種の演出、アニメーションとの融合、2種類もあるOP(私の好みは別として)も含めて、トップランナーでなければ企画できないコラボだし、made in Japanでなければありえない組み合わせだ。
「テイルズでしかできない表現」こそが、このシリーズの肝であり、魂なのだと思う。
(他のテイルズ作品をやったことがないので、ここは勝手な解釈なのだが。)
総合評価はクリアするまで我慢するとして、すでに「プレイしてよかった」と思えている。
クリア時間の目安は40時間程度とのことだが、2部開始時点でもう50時間近くになっているのよね…。俺が下手だからかな?