うん。

よかった。

 

長い物語の本当に最後の最後で、一番感情を揺さぶられるシーンがあるので、余韻もしっかり残る。

このシーンを描きたくて脚本を作ったのではないかという気すらする。

ムービーになるとティーダもユウナもCGを超えた“生きている人”になってしまうので余計つらいね。

 

エンディングがハッピーでなくとも、物語としてはこっちの方が筋が通っている。

夢を召喚すること自体が自己目的化し、その無限のループを断ち切ったのは召喚された夢自身だった、ということか。

世界を救った英雄ティーダがかわいそうすぎるが、まあ、ユウナとキス出来たら本望か。

 

描かれている物語は良く考えると狂気の沙汰なのだが、音楽と映像が美しいのでそう感じさせない。

にもかかわらずラスボスのBGMはデスメタルって、何なのあんた。最高じゃないの。

 

ちなみに私は一度ラスボスに敗れ、レベル上げ&装備の改造にいそしんでから、ルールーの連続魔法(フレア)をユウナがものまねして、回復役に薬草の知識つけてメガポがぶ飲みするというゴリ押しプレイでリベンジを果たしました。

ゲームとしても十分面白かった。

トロコンとかはちょっとやる気にならんが。

 

ここからは私の好みの問題で、本当によくできた素晴らしい作品だが、自分の中で本作を「ベスト」とは呼べない理由。

 

それはずばり、「本当に悪い奴」が出てこないということ。

基本、悪い奴はエボン教の老師たちと、変態仮面シーモア坊ちゃんぐらいなもので、ジェクトもシンもエボン=ジュも、もはや悪意がどこにも見当たらない。

老師もシーモアも、「悪い」というより「弱い」という方が正しいのかも。

世界が救われればそれに越したことはないのだが、「1000年かかっても無理だったんだから、無理だろ~(絶望)」ということだから、その絶望の当事者でないティーダの視点からはクズでも、もとはみんな悪い人間ではない。

同様に、まやかしの教えを金科玉条のごとく崇拝する普通の人々や、世界の破滅を目の前にしても権力欲に溺れるキノックのような人間も描かれていたが、みんなとにかく弱い人間で、剣や魔法や召喚獣で袋叩きにするほどの罪人ではなかった。

 

実質的ラスボスのジェクトに至っては、オーバードライブまでもがブリッツボールの選手時代の必殺シュートだし。

もとはと言えばジェクトもティーダもプロスポーツ選手として自己実現していたわけで、彼らを最後にこんな風に戦わせるのは残酷だ。

父と息子を戦争&宗教がらみの1000年越しの騒動に巻き込んだ挙句に、より倫理的に、より彼ららしく振舞おうとすれば必然的に犠牲になるしかないような運命を与えるとは、この親子が報われなさすぎてかわいそう。

他人の「夢」として「召喚」されるという「ファンタジー」…。えげつな。

 

ユウナレスカが1000年も無意味なループに執着し続けた理由もよくわからん。

お前が親父を始末すりゃよかったんちゃうんか。

第三形態のルックスと言い、「悪い奴」と言おうと思えば、言えないこともない。

(このCGの完成度はPS2と思えないぐらい素晴らしかった。ほんとに気持ち悪かったよー!)

 

2000年前後、このころから、ゲーム・アニメ・マンガなどのいわゆる「サブカル」も質・量両面で飽和し始め、単純な勧善懲悪や善悪の二元対立だけでは物語を消費する人々の共感や満足を得られなくなってきた、ということも言えるのかもしれない。

何をやっても「お約束」「フラグ」「キャラ」として「テンプレ」になってしまっていて、どこかで見たことある話になってしまう。

特にこのFF10の場合は、前作の9がある意味で「原点回帰」という名の「ベタ」に正面から取り組んだ作品であったから、できるだけそこから遠くにあるファンタジーを作り出す必要があったのだろう。

現に「10はベストとは呼べない」などと訳知り顔で勝手な評論をブログに載せる私のような人間がいるくらいだから。

 

しかし一方で、そういう難しい要求にもアクロバティックに答えて唯一無二の作品を仕上げてしまうのがFFのすごいところでもある。

 

本作では、「悪を倒して世界を救う」「恋を実らせて幸せになる」という猪突猛進・単純明快な浮かれた物語ではなく、狂気をはらんだ精神世界の「謎解き」が旅の動機の中心に据えられている。

それは、FFシリーズ伝統の美しい音楽と映像を伴って描かれるティーダとユウナの純愛が織り込まれているからこそ見ていられるのであって、単に(えげつない)謎解きだけだったら一部のマニアが「隠れた名作」として評価するだけで、代表銘柄のRPGでは万人受けしないものになっていただろう。

二人の恋は謎が解けると同時に覚めてしまう夢、永遠に報われることのない悲恋であり、思い出の中でいつまでも互いの名を呼び続ける「彦星と織姫」になることで完成される切ない「ファンタジー」でもある。

「謎」と「純愛」という「二つのファンタジー」を見事に調合した脚本の芸術だとすら思う。

 

ゲーム性やシステム面も掘り下げようと思ったが、思いのほか長くなってしまったので、まあこの辺にしておきます。

第一印象は最悪だったが、終わってみれば遊んでよかったと思える名作RPG・FF10。

10-2はやる気せん。この作品の続編を作る、という発想自体が野暮すぎてイカン。

PS5を持っていないので、ユフィの追加エピソードが遊べない(ソニーめ!)のだが、次は何して遊ぼうかな…。