最近まで、私の中で、「ナルシシズムについて考える」というのがテーマになっており、ナルシシズムについて論じた新書を何冊か読みました。

 

ナルシシズムって、なんか、イケメンが鏡に映った自分の姿にうっとりしている、というイメージですし、実際、「自己陶酔」とか「うぬぼれ」っていう「翻訳」のされ方をしていますよね。

 

しかし、それは実は表面的な現象にすぎず、起源をさかのぼると、実は生まれた直後から始まっている、ということが分かりました。

 

当然ですが、誰もが皆、赤ちゃんでしたよね。

そして、よほどの不運に見舞われない限り、人生の最初の数年~十数年の間、母親との関係が絶対的だった時期があり、そのことを今でも覚えていますよね。

 

人間にとって、世界は二つあります。自分の内側と、外側。

自分自身と、世界。

 

世界はタマネギのような多層構造になっていて、現代であれば、

母親<家庭<学校<会社<国家<国際社会<宇宙

みたいになっています。

 

そこで、個人の心の在り方と幸不幸の感覚にとって重要になってくるのが、

「この世界は自分にとって、敵か、味方か?」という問題です。

 

ここで言う「敵/味方」というのは、

「快を与え、不快を取り除く」という関わり方をしてくれるのが「味方」であり、その逆は「敵」

ということです。

 

さて、生まれたばかりのベビーちゃんは、自分では何もできません。

それどころか、世界と自分との境界がどこにあるのかもわかっていません。

前述の、「自分の外側と内側」という二元論自体、理解できていないのです。

 

だから赤さん(ここでは赤ちゃんもベビーちゃんも赤さんも、気分で使っています)は、

自分の腕を自分で触って、自分と世界の境界線を確かめるような動作をします。

 

そして、おなかがすいたり、ウンチを漏らしたりして、泣きわめきます。

世界(=母親:この時はまだお母さん=全宇宙です)に対して、自己主張しているのです。

そして、「快を与え不快を取り除く」ということをすぐにしてくれれば、泣き止みます。

そのとき、世界は、自分の「味方」です。

 

しかし、お母さんとて、個別の事情を抱えた人間です。

スグに赤さんの要求にこたえられるとは限りません。

すると、時として、「いつまでも不快を取り除いてくれず、快も与えてくれない」ということになり、赤さんはより激しく抵抗します。

これが人生で最初の「敵」です。

 

しかし、赤さんはやがて、「味方」だと思っていた母は、「敵」だと思っていた母と同一人物であったことに気が付きます。

そしてそのことに心理的な葛藤や動揺を感じ、「抑うつ」を経験します。

その状態を「抑うつポジション」というのだそうです。

 

さて、長くなりましたが、「ナルシスト」と呼ばれる人々は、この「抑うつポジション」をうまく克服することに失敗した人らしいのです。

自分自身がそうだから、余計に納得できます。

(蛇足ですが、引きこもりの人、というのもみなこの類のはずです。)

 

つまり、世界は「敵」でもあり、「味方」でもある。

その両義性を自分の中でうまく消化できているかどうか。

それこそが「自立」にかかわる重要なポイントだった、ということになります。

 

閑話休題。

人間でも構いませんし、犬や猫、または爬虫類や、場合によっては昆虫だって構いません。

赤ちゃん、というのを思い浮かべてみてください。

超かわいいですよね。(幼虫は、やっぱキモいか。)

そして、「無垢」ですよね。

 

この世が苦しみに満ちた世界であるということを何も知らない目をしていますよね。

その目で見つめられると、何か特別な感情が半ば本能的に沸き上がりますよね。

 

それによって可愛がられて、世界(=自分の外側)を、とりあえず「味方」と認識できるのだと思います。

 

しかし、一皮むけば、この世は弱肉強食の修羅の巷です。

野生動物の世界を見れば、それは明らかです。

ライオンは、生まれたばかりのシマウマの赤ちゃんですら容赦なく襲い、生きたまま鋭い牙と爪で八つ裂きにして、自分の糧とします。

そうしないと、自分自身が逆の立場になるからです。

生きるために、必要なのです。

 

さて、野生動物の世界には食物連鎖という節理があります。

人間だって、日々えげつないことをやっているじゃないですか。

人間は人間にとって狼である、とホッブズは表現しましたが、そういう側面は否定できません。

そして、残念なことに、あろうことかその野蛮な側面自体、(私の大嫌いな)グローバル資本主義を駆動させるのに必要不可欠な「節理」ですし、それによって文明が発展してきたということも、否定できない事実です。

 

長くなってきましたので、ここで一回切りましょう。

つづく。