寒月光たまゆら蜜をささげん 掌
『花のいのち』は
映画監督、そして草月流家元の勅使河原宏、
碩学の文劇評論家 大河内昭爾との対談。
勅使川原宏監督の「砂の女」、「利休」は
いまも眼前にあるじつに印象的な作品。
なにより研ぎ澄まされた美しい映像、
底力ある脚本や美術、個性的な出演者たち。
そして音楽は武満徹。
勅使川原宏個展での圧倒的な<竹>。
初めてみたときの衝撃はわすれられない。
しなやかで強靭、
ボリュームがあっても軽やか。
竹と出会った・・・
そうした竹作品の写真もうれしい。
その一葉、1989年「金沢読売会館ホール」での個展、
空間を覆いつくすような竹作品と
勅使河原宏の書で、壁一面に朔太郎の「竹」が!
これは見てみたい。
「勅使川原宏展」、企画展示を熱望してやみません。
勅使河原 宏 (てしがはら ひろし 1927年 -2001年)
映画、いけばな、陶芸、書、舞台美術、オペラなど諸分野で活躍。
草月流三代目家元。
ATG初の日本映画の監督。
阿部公房原作の作品ではドキュメンタリータッチ、そして
シュールレアリスム溢れる映像美、世界的に評価された。
<見る>とはなにかと自分へ問いかける本。
「いつもの風景が、その姿を変える
単なる偶然、でも、それは意味ある偶然かもしれない。
世界各地へ出かけ、また漱石『夢十夜』や三島『豊饒の海』、
芭蕉など文学の世界を逍遥し、
死者と生者が交わる地平、
場所に隠された意味を探し求める。
能楽師・安田登が時空を超える精神の旅へといざなう。」と本の紹介。
安田登(やすだ のぼる)さんは能楽師・ワキ方。
「平家物語」「太平記」100分で名著の講師として
ご存知の方も多いのでは。
能のワキは「分く」を語源とし、
この世とあの世、生者と死者との境界にいる人。
ワキによって観客・現実の人を
<「ここ」で霊・死者と出会わせてしまう>と安田さんは言う。
芭蕉の「おくのほそ道」では
「芭蕉は自分の旅を能に見立てている」との指摘。
その詞章、僧形での旅、連句への言及などなど、
じつに興味深い。
そして「芭蕉は夢路の旅を続けながら、
一歩一歩、おくのほそ道に足を踏み入れていき、
その人格の変容とともに俳諧は完成してゆく」
【もくじ】
■ はじめに
■ 旅
敦盛と義経
奄美
チベットで聴いた「とうとうらり」
復讐の隠喩
人を待つ男
孤独であることの勇気
ベトナムは美しい
生命の木
■ 夢と鬼神——夏目漱石と三島由紀夫
『夢十夜』 待ちゐたり
太虚の鬼神——『豊饒の海』
■ 神々の非在——古事記と松尾芭蕉
笑う神々——能『絵馬』と『古事記』
謡に似たる旅寝
非在の蛙
■ 能の中の中国
西暦二千年の大掃除 時を摑む
麻雀に隠れた鶴亀
超自然力「誠」
神話が死んで「同」が生まれる
■ 日常の向こう側
心のあばら屋が見えてくる
レレレのおじさんが消えた日
掃除と大祓
死者は永遠からやってくる
■あとがき
◆安田登(やすだ・のぼる)
下掛宝生流能楽師。1956年千葉県銚子市生まれ。
高校時代、麻雀とポーカーをきっかけに
甲骨文字と中国古代哲学への関心に目覚める。
能楽師のワキ方として活躍するかたわら、
『論語』などを学ぶ寺子屋「遊学塾」を、
東京(広尾)を中心に全国各地で開催する。現在、関西大学特任教授。
著書に『あわいの力 「心の時代」の次を生きる』、
シリーズ・コーヒーと一冊『イナンナの冥界下り』(ともにミシマ社)、
『能 650年続いた仕掛けとは』(新潮新書)、
『あわいの時代の『論語』 ヒューマン2.0』(春秋社)、
『野の古典』(紀伊國屋書店)など多数。
平松洋子『父のビスコ』小学館 2021年刊
食と生活、文芸と作家などをテーマに
執筆した著者。
<食>に関する著作をこれまで読んできました。
「おあげさん」はあの油揚げに焦点をあてた本。
この「父のビスコ」では
祖父・祖母、父母の記憶をていねいに記す、
初の自伝的エッセイ集。
あくまでの筆致はおさえて、
その滋味あふれる文章は、
その本質をさらりと、それでいて深い。
タイトルとなった「父のビスコ」にうたれました。
親しみはあってもあまり話すことのなかった「父」。
入院から介護施設へ。
そのおりの父の発言が胸に刺さる。
「知りたいことまだたくさんある。
だから死ぬわけにはいかん」
「ここの生活には目新しいものはないほうがいい」と
上等な松花堂弁当にそっと箸をおく。
温かい鰻重には
「わあ鰻!? 柔らかい宝石を食べているようだ」と
相好をくずす。
そのお父上が亡くなられたのが1月23日。
◆目次
「父のどんぐり 」
「母の金平糖 」
「風呂とみかん」
「ばらばらのすし」
「やっぱり牡蠣めし」
「悲しくてやりきれない」
「饅頭の夢」
「おじいさんのコッペパン」
「眠狂四郎とコロッケ」
「インスタント時代」
「ショーケン一九七一」
「『旅館くらしき』のこと」
「流れない川」
「民芸ととんかつ」
「祖父の水筒」
「場所」
「父のビスコ」
『旅館くらしき』創業者による名随筆を同時収録。
<幻>のオペラ「シッラ」ヘンデル作曲
ついに日本初演、いえ世界初演出となるこの公演。
神奈川県立音楽堂で2022年10月上演されました。
過去のチラシでおわかりかと思いますが、
2020年公演3日前にコロナ禍で中止に。
そのときの指揮、オーケストラ、キャスト、スタッフが
ふたたび集結しての上演。
プレミアムシアターで観ることができました。
ビオンディ指揮&エウローパ・ガランテ
彌勒忠史演出、
tamako☆美術、友好まり子衣裳、稲葉直人照明
ビオンディはヴァイオリンを弾き、
エウローパ・ガランテを振る。
その古楽の音(ね)が、まさに妙音。
カウンターテナーでなく女声が大活躍。
ソプラノをはじめとし、
ズボン役(男役)のメゾソプラノ、コントラルトの音色が、
このバロックオペラを燦然と輝かす!
世界各国からの歌手たち、
その絢爛たる声を聴くだけでも一興。
タイトルロールのシッラ(ソニア・プリナ)は
歌舞伎の悪役の青隈(あおぐま)が顔によくのって、
その豪快な衣装とあわせ見事な出来栄え。
女性は華やかな振袖、帯にドレスのように長く裾をひいた衣装。
そう、この舞台はシンプルで、
赤い鳥居や注連縄を思わせる美術がじつに印象的。
初めて観たバロックオペラ「シッラ」、
強烈な存在感をもって迫ってきました。
【出演】
ソニア・プリナ(コントラルト/ローマの執政官シッラ)
ヒラリー・サマーズ(コントラルト/ローマの騎士クラウディオ)
スンヘ・イム(ソプラノ/シッラの妻メテッラ)
ヴィヴィカ・ジュノー(メゾソプラノ/ローマの護民官レピド)
ロベルタ・インヴェルニッツィ(ソプラノ/レピドの妻フラヴィア)
フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ(ソプラノ/シッラの副官の娘チェリア)
ミヒャエル・ボルス(バス/神)

七人の主演歌手
【演出】彌勒忠史
【美術】tamako
【衣裳】友好まり子
【照明】稲葉直人(ASG)
【台本・字幕翻訳】本谷麻子
【舞台監督】大澤裕(ザ・スタッフ)
●〈名優たちの転機〉
聞き手・文◎関容子
片岡仁左衛門
連載「名優たちの転機」(婦人公論2月号)は、
<第一線を走り続ける俳優たちに3つの転機を聞くもの。>
聞き手・文は聞き書きの名手・エッセイストの関容子さん。
今回はまさにとっておきの片岡仁左衛門さん!
すらりとすらりとした長身、
さわやかな、爽やかな色気、
その口跡の素晴らしさ、
役へのこだわり、
もうもう極めつきの二枚目。
御年78歳というのだから驚く。
関容子さんにそっと秘めていたものまで話されて。
仁左衛門さんも
「芸の道に生きる者の宿命として、その覚悟」を語って。
記事&写真もはどうぞ、
「婦人公論」2023年2月号をお読みください。