村田喜代子『新古事記』講談社 2023 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

村田喜代子『新古事記』講談社 2023

 

 

遠景にある戦争、

 

秘密裏の原爆開発、

 

その近くにある静かな日常生活を妻の視線で描く

 

もうひとつの<ひろしま>。

 

 

◆本の紹介

第二次大戦日米開戦後のアメリカ。

オッペンハイマー、ノイマン、ボーア、フェルミ、若手のファインマン……。

太平洋戦争の最中、世界と隔絶したニューメキシコの大地に

錚々たる科学者たちが続々と集まってくる。
咸臨丸の船員だった日本人の血を受け継ぐ日系三世のアデラは

両親にさえ物理学者の夫の仕事の内容を教えられず、

住所を知らせることもできない。

秘密裏に進む夫たちの原爆開発、施設内の犬と人間の出産ラッシュ。

それと知らず家事と子育てに明け暮れる学者の妻たちの平穏な日々。



「新しい世界は神じゃなく、人の子がつくる」

――”われは死なり 世界の破壊者となれり”
その小さな神たちが行き場を探して右往左往している。

辺りは火火火火火火、赤いものがボウボウと襲いかかる。
世界は戦さの火だらけだ。火火火火火火が荒れ狂う。

小さい神々は蟹のように火火火火火火に追われて逃げ惑う。
山の神も火火火火火火、

川の神も火火火火火火に包まれ、

樹木の神も立ったまま火火火火火火に焼け焦げていく。
焼け滅ぼされていく。

 

装画:萩結

装丁:六月

 

 

 ◇村田喜代子
むらた・きよこ 1945年生まれ。

著書に『故郷のわが家』(野間文芸賞)、

『ゆうじょこう』(読売文学賞)など。