岸 惠子『91歳5ゕ月』幻冬舎 2024
このあでやかなこと、
この華やかなこと。
岸惠子 2022年の肖像。
女優でありジャーナリストである
岸惠子の最新エッセイ。
その視線の確かさはご自身へもむかう。
「高齢者の自覚」のなんと凛々しいこと。
◆本の紹介
私に、輝きや翳りを刻んだ人生の物語
忘れ去るにはもったいない邂逅と別離、
この歳だからこそ気づいた生きることの意味……。
溢れんばかりの感慨を込めた「ラストメッセージ」
月日は容赦なく流れ、私は九十歳になってしまった。
(中略)切れた息を深々と吸い、暮れなずむ夕空を眺めながら、
人生晩年の一日にまた陽が沈むと、やるせない自覚をした。
「身体能力は磨り減るものなのよ。
それを受け入れて、結構いい人生だったんじゃないの」
沈みゆく太陽が私にやさしく笑いかける。
「褒めてくれるんだ」。めげない私も、思わず微笑みながら、
入陽のぬくもりに身をゆだねた。
(「高齢者の自覚」より)
