あの伝説の映画「炎上」1958年
原作:三島由紀夫
監督:市川崑
主演:市川雷蔵
『炎上』(えんじょう)は、1958年公開。
三島由紀夫『金閣寺』を市川崑監督が映画化した99分のモノクロ作品。
主演は時代劇のスター・市川雷蔵で初の現代劇主演。
この吃音症の青年・溝口をじつにリアルに演じる、
不安、不遇、劣等感などを余すところなく表現し、
あの<目>がことに印象的。
仲代達也の不埒で傲岸な柏木とのからみ、
中村雁次郎の好色で底知れない人物。
なによりもモノクロームの光と影の映像がこよなくうつくしい。
これは映画館のスクリーンで観たい!
映画では『金閣寺」が「驟閣寺」(しゅうかくじ)となって。
三島はこの映画について「日記 裸体と衣装」でこのように
<黒白の画面の美しさはすばらしく、全体に重厚沈痛の趣きがあり、
しかもふしぎなシュール・レアリステックな美しさを持つてゐる。
放火前に主人公が、すでに人手に渡つた故郷の寺を見に来て、
みしらぬ住職が梵妻に送られて出てくる山門が、
居ながらにして回想の場面に移り、
同じ山門から、突然粛々と葬列があらはれるところは、怖しい白昼夢を見るやうである。
俳優も、雷蔵の主人公といひ、雁治郎の住職といひ、これ以上は望めないほどだ。
試写会のあとの座談会で、市川崑監督と雷蔵君を前に、私は手ばなしで褒めた。
かういふ映画は是非外国へ持つて行くべきである。
センチメンタリズムの少しもないところが、外国人にうけるだらう。>
