遠田潤子『天上の火焰』集英社 2025
人間とはなんと切ない業火をかかえもつのか。
燃えさかる炎のイメージが、
備前焼窯元の父子三代の相克、
その内奥に渦巻く情念と重なってゆく。
家族とはなにかを問い続ける遠田潤子の新刊。
ドヴォルザーク「スラヴ舞曲集 第二集 第二番」
小説の中で通奏低音のように流れて。
◆本の紹介はこちら
大らかな性格で孫に優しい偉大な人間国宝の祖父・路傍(ろぼう)。
氷のように冷たく息子に無関心な轆轤の名手である父・天河(てんが)。
物心つく前に母親を亡くした城(じょう)は、
陽と陰のような二人の間で育ち、悩み苦しんでいた。
父に認められたいがゆえに歪んでいく心。
それは宿痾のように精神を蝕んでいき……。
備前市伊部を舞台に、備前焼窯元父子三世代の心の闇に斬り込み、
愛と憎しみの狭間でもがく人間たちを描いた、焰の家族史。
装画:流 麻二果
装幀:アルビオレ
◆遠田潤子 (とおだ・じゅんこ)
1966年大阪府生まれ。大阪府在住。関西大学文学部卒。
2009年、第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した『月桃夜』でデビュー。
『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベストテン」で第1位、
『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベストテン」で第1位、
『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞、『銀花の蔵』が第163回直木賞候補に。
他の著書に『アンチェルの蝶』『ドライブインまほろば』『廃墟の白墨』
『紅蓮の雪』『人でなしの櫻』『邂逅の滝』『ミナミの春』ほか。