蜘蛛はお好き? 野村育世『蜘蛛』講談社選書メチエ 2025 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

野村育世『蜘蛛』講談社選書メチエ

 

 

<虫愛ずる姫>ならぬ

 

<蜘蛛愛ずる中世史家>野村育世の蜘蛛論。

 

 

蜘蛛は「アリアドネの糸」「ナスカの絵」などなど

 

世界の神話に多く登場する。

 

人は<蜘蛛>を恐れたり、嫌ったり、

 

あるいは崇めたり、慈しんだり。

 

この書『蜘蛛』では

 

日本の古代・中世・近世の伝統や思考のなかで、

 

蜘蛛を見る目の変遷をたどる。

 

 

◆本の紹介

 

蜘蛛が網を作ると、「恋しい人がやってくる」と喜んだ平安貴族。

弥生人はその姿を銅鐸に刻み、

ペルーの古代人はナスカ台地の砂漠に描き、

ギリシアから北米まで、蜘蛛は世界の神話に数多く登場する。
時に恐れ、嫌い、崇め、慈しむなど、評価は極端。

なのに、なぜか惹かれずにはいられない……。


人と蜘蛛のそんな不思議な関係を、日本中世史研究家が

貴重な図版・史料とともに丁寧に考察。
蜘蛛愛好家の筆者だからこそ見えてくる、新しい歴史研究!



清少納言は、現代人よりもはるかに虫好きだったのだ。

いささか厄介な虫たち、蠅、蟻、蚊、蚤について、「憎し」と言いながら、

面白がってその生態を見つめ、魅力的に描写した女性がいた。

清少納言である。(中略)
蜘蛛についても、網にかかった白露を、

「をかし」「あはれ」の両方を使って絶賛している。
こうした眼差しは、どこへ行ってしまったのだろうか。

いま、人間が虫に対して抱いてきた感情、心性、文化を見直し、

つき合い方を考えることは、急務であると思われる。
―――本書 はじめに より

 

◆目次

はじめに

第一章 遺跡の蜘蛛・神話の蜘蛛
1 蜘蛛はどんな生きものか
2 蜘蛛の考古学
3 世界の神話の蜘蛛たち

第二章 敵の名は土蜘蛛
1 征服神話の中の土蜘蛛たち
2 土蜘蛛は蔑称か

第三章 蜘蛛に寄せる恋の歌
1 蜘蛛に寄せる恋の歌
2 東アジアのめでたいしるし
3 蜘蛛と七夕

第四章 空を飛ぶ蜘蛛
1 雪迎え――空飛ぶ蜘蛛の発見
2 漢詩と和歌に詠まれた遊糸
3 「かげろふ」をめぐる混乱
4 『かげろふ日記』の「かげろふ」とは何か
5 十二単を飾る糸ゆふ

第五章 蜘蛛は神仏のお使い
1 蜘蛛は知る者、賢い者
2 あの人も蜘蛛に助けられた

第六章 妖怪土蜘蛛登場
1 蜘蛛嫌いの萌芽
2 寺蜘蛛の登場
3 よみがえった土蜘蛛

第七章 民俗と遠い記憶
1 相撲を取る蜘蛛
2 蜘蛛の昔話
3 夜の蜘蛛・朝の蜘蛛

おわりに ――蜘蛛はともに生きる仲間

 

 

カバー図版:西川佑信「衣通姫図(そとおりひめず)」江戸時代中期