澤田瞳子『のち更に咲く』2024年 新潮社刊
これ花の中に偏(ひとへ)に菊を愛するにはあらず
この花開(ひら)けてのち更(さら)にはなのなければなり
元稹「菊花」『和漢朗詠集』より
時代は平安朝 藤原道長の権力をにぎっていた、
まさに今放映されている『光るの君へ』の時代。
平安中期(寛弘5年/西暦1008年頃)でしょうか。
兄・藤原保昌(やすまさ)は武勇に優れた肥後守、のちに和泉式部の夫、
弟・藤原保輔(やすすけ)は「袴垂(はかまだれ)」という盗賊団の首魁。
このふたりは実在の人物で、
小紅という妹の視点でえがかれる。
<京の街を荒らし回っていた伝説的な盗賊団「袴垂」一党と、
絶対安定政権に手をかける藤原道長と正妻・倫子、
まさにいま『紫式部日記』を描かんとする紫式部(藤式部)と
その舞台である土御門第(道長邸)、
天才歌人・和泉式部と最後の夫・藤原保昌といったキャストに、
「ある貴人の出生の秘密」がからむという>と紹介にある。
澤田瞳子さんの確かな歴史知識に裏打ちされ、
あざやかなストーリーテリング、
人物がくっきりと立ち上がり、
そのひとびとの「身近な 死」が、
あますところなく描かれて。
極上のエンターティメント♪