<田中一村と会う> 田中一村記念美術館に行ったのは2010年♪ | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

田中一村の画に魅かれて、

 

というより衝撃をうけて

 

ぜひ奄美大島の田中一村の画に会いたいと、

 

田中一村記念美術館行ったのは2010年の10月。

 

 

その時のブログをここに。

 

◆田中一村を奄美の大気の中で観たかった。



奄美パークのなかに田中一村美術館はある。


この建物自体が素晴らしい。


高倉という奄美の建物をイメージし、


三つあるそれぞれに一村の作品が時代ごとに展示されている。


天井が高く、落ち着いた空間に作品からの静寂が漂う。


新しい室内に襖絵がゆったりとある。



二十歳前後の昂ぶった気持ちのほとばしりでるような、


画と賛。


藤、牡丹などエネルギーが満ちる。

南画などの作品。「倣蕪村」なども。



青龍展での受賞作「白い花」、これは戦後間もない頃。


白と緑が交響する。


「秋晴れ」に想いを籠め描くが落選。


ここから奄美までは模索の時代といえるか。



奄美での作品の室内はさらに密度の濃い空間となる。


「パパイヤ」は墨の濃淡で描かれる。


後ろからの光源に実が、葉が、茎が浮かび上がる。


拡がってゆく葉が光の筋ごとのようにも見える。



「アダンの木」


手前に大きく描かれたアダン。


その浜辺は永遠に暮れてゆくよう。


さらに密やかで、


精神の底の底まで、奥の奥まで、

 

降りて行ったところで、


絵筆をとったかのよう。



「クワズイモとソテツ」


クワズイモの成長の段階がひとつの画に


なんの不思議もなく、おさめられている。



ひとつひとつの作品が、


絵を鑑賞しているというより、


なにか大きなものへの、


祈りというもの、


魂というもの、


そういった敬虔な思いへいざなう。



南国へというとなにか開放的な明るいイメージがあるが、


その明るいまま、


厳粛なといってもいいほどの佇まいが、ある。


あまりにも緻密な写実があり、


リアルをうつそうとして幻想へ、と。



この奄美の室の寂静は深い。

絵を見て手を合わせたのは、初めてのこと・・・

 

 

 

<田中一村(たなか・いっそん)>

1908年~77年、栃木市生まれ。
少年時代から画才を認められ、
東京美術学校(現・東京藝術大学)日本画科に入学するが、
事情により中退。
以後、画壇から離れて制作を続ける。
58年(昭和33)、奄美大島に渡る。
紬工場で染色工として働きながら、
奄美の自然を題材とした作品を描き続けた。

 

 

 

 

 

 

「アダンの木」