井上道義『降福(こうふく)からの道』三修社 2023年刊
指揮者・井上道義(いのうえみちよし)氏、
2024年12月30日、この日をもって
引退されることを表明された。
井上<ミッキー>のエッセイ集
「芸術以外に生甲斐なんか残されていないぜ。
遠慮は芸術の敵だろう」
これはあとがきのことば。
エッセイは
仕事、音楽、社会、そして人との出会いが
直截な、嘘のない言葉・感性でつづられる。
5つのテーマに編集され、
書かれた年代、執筆時の年齢が付されている。
「人生の道」 自身の半生を振り返りつつ、日々の出来事の中で生きる意義を見つめる。
「音楽の道」 ショスタコーヴィチ等敬愛する作曲家についてや、
ミチヨシ流音楽鑑賞術などを記した。
「街から街へ」 ヨーロッパ、京都、成城などゆかりの地についての思い
「交差点」 巨匠たちへの追悼文や、エネルギーをくれた人々との交流を回想。
「舞台への道」 コンサートの舞台の上にだけ現れる世界について。
<「自分を最も生かせる道」として指揮者なった<みちよし>
自分を十二分に生きる、
自分に誠実に生きることに
欲張り(?)な随想と実行の記録。>と紹介されて。
◆井上 道義(いのうえみちよし)
1946年東京生まれ。桐朋学園大学にて齋藤秀雄氏に師事。
1971年ミラノ・スカラ座主催グィド・カンテルリ指揮者コンクールに優勝して以来、
一躍内外の注目を集め、世界的な活躍を開始する。
1976年日本フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会で日本デビュー。
1977~1982年 ニュージーランド国立交響楽団首席客演指揮者、
1983~1988年 新日本フィルハーモニー交響楽団音楽監督、
1990~1998年 京都市交響楽団音楽監督・第9代常任指揮者、
2007~2018年 オーケストラ・アンサンブル金沢音楽監督、
2014~2017年 大阪フィルハーモニー交響楽団首席指揮者を務め、
斬新な企画と豊かな音楽性で一時代を切り開いた。
これまでにシカゴ響、ハンブルク響、ミュンヘン・フィル、
スカラ・フィル、レニングラード響、フランス国立管、ブタペスト祝祭管、
KBS響、ベネズエラ・シモンボリバル、および国内の主要オーケストラを指揮してきた。
1999~2000年 新日本フィルハーモニー交響楽団と共に
マーラー交響曲全曲演奏会を取り組み「日本におけるマーラー演奏の最高水準」と高く評価。
2007年には、日露5つのオーケストラとともに
「日露友好ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクト」を実施し、
音楽・企画の両面で大きな成功を収めている。
このプロジェクト以降、日本におけるショスタコーヴィチの演奏会は一気に増加しており、
その最大の功労者とも言われている。2014年4月に病に倒れるが、同年10月に復帰を遂げる。
2015および2020年 全国共同制作オペラ「フィガロの結婚」(野田秀樹演出)、
2017年 大阪国際フェスティバル「バーンスタイン:ミサ」(演出兼任)、
2019年 全国共同制作オペラ「ドン・ジョヴァンニ」(森山開次演出)、
2023年「井上道義:A Way from Surrender ~降福からの道~」を、
いずれも総監督として妥協なく率い既成概念にとらわれない唯一無二の舞台を作り上げてきた。
1990年 ザ・シンフォニーホール「国際音楽賞・クリスタル賞」、
1991年「第9回中島健蔵音楽賞」、
1998年「フランス政府芸術文芸勲章(シュヴァリエ賞)」、
2009年「第6回三菱UFJ信託音楽賞奨励賞(歌劇イリス)」、
2010年「平成22年京都市文化功労者」、
社団法人企業メセナ協議会「音もてなし賞(京都ブライトンホテル・リレー音楽祭)」、
2016年「渡邊暁雄基金特別賞」、「東燃ゼネラル音楽賞」、
2018年「大阪府文化賞」「大阪文化祭賞」「音楽クリティック・クラブ賞」、
2019年NHK交響楽団より「有馬賞」、2023年「第54回サントリー音楽賞」を受賞。
オーケストラ・アンサンブル金沢桂冠指揮者。
2024年12月にて指揮活動の引退を公表している。