サマーコンサート、明日です♪ 朔太郎を<朗読> | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

サマーコンサート、明日です♪

 

ヴァイオリン、声楽、チェロ、バリトンサクソフォーンを

 

お楽しみください。

 

8月9日(金) 18:00~ @高崎コアホール 入場は無料です。

 

 

 

◆萩原朔太郎<朗読>する

 

 『月に吠える』序、山居、 蛙よ、蛙の死 

 

『定本青猫』 時計

 

 

時計

 

 

古いさびしい空家の中で

 

椅子が茫然として居るではないか

 

その上に腰をかけて

 

網物をしてゐる娘もなく

 

暖爐に坐る黒猫の姿も見えない

 

白いがらんどうの家中で

 

私は物悲しい夢を見ながら

 

古風な柱時計のほどけて行く

 

錆びたぜんまいの響きを聽いた。

 

じぼ・あん・じやん! じぼ・あん・じやん!

 

 

 

 

 

 

古いさびしい空家の中で

 

昔の戀人の寫眞を見てゐた。

 

どこにも思ひ出す記憶がなく

 

洋燈(らんぷ)の黄色い光の影で

 

かなしい情熱だけが漂つてゐた。

 

私は椅子の上にまどろみながら

 

遠い人氣(ひとけ)のない廊下の向うを

 

幽霊のやうにほごれてくる

 

柱時計の錆びついた響をいた。

 

じぼ・あん・じやん! じぼ・あん・じやん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しづかにきしれ四輪馬車、

 

ほのかに海はあかるみて、

 

麥は遠きにながれたり、

 

しづかにきしれ四輪馬車。

 

ひかる魚鳥の天景を、

 

また窓青き建築を、

 

しづかにきしれ四輪馬車。