萩原朔太郎「蛙よ」「蛙の死」、朗読します♪  | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

8月9日(金) 明後日、朗読いたします。

 

萩原朔太郎『月に吠える』より

 

 

蛙よ

 

蛙の死

 

 

 

蛙よ

 

 蛙よ、

 

靑いすすきやよしの生えてる中で

 

蛙は白くふくらんでゐるやうだ、

 

雨のいつぱいにふる夕景に、

 

ぎよ、 ぎよ 、 ぎよ、 ぎよ と鳴く蛙。

 

 

まつくらの地面をたたきつける、

 

今夜は雨や風のはげしい晩だ、

 

つめたい草の葉つぱの上でも、

 

ほつと息をすひこむ蛙、

 

ぎよ、 ぎよ、 ぎよ、 ぎよ、と鳴く蛙。

 

 

蛙よ、

 

わたしの心はお前から遠くはなれて居ない、

 

わたしは手に(あか)()をもつて、

 

くらい庭の(おもて)を眺めて居た、

 

雨にしほるる草木の葉を、

 

つかれた心もちで眺めて居た。

 

 

 

 

 

 

蛙の死

 

 

蛙が殺された、

 

子供がまるくなつて手をあげた、

 

みんないつしよに、

 

かわゆらしい、

 

血だらけの手をあげた、

 

月がでた、

 

丘の上に人がたつてゐる。

 

帽子の下に顔がある。

 

              幼年思慕篇