「ふはりふはりと昇ってゆこうよ」♪ @前橋文学館 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

空を飛びたい!

 

雲を、空を、飛んでいたい!!

 

そんな思いを一度や二度いだいたことは

 

誰にもあるのではないでしょうか。

 

 

そんな3人が1930年代にいました。

 

サン・テグジュペリ、

 

堀越二郎、

 

萩原朔太郎。

 

 

その三人の展覧会「ふはりふはりと昇ってゆこうよ」

 

前橋文学館 オープンギャラリーで催されています。

 

 

飛行機乗りと風船乗り「ふはりふはりと昇つて行かうよ。」−−サン=テグジュペリ・堀越二郎・萩原朔太郎|前橋文学館 (maebashibungakukan.jp)

 

 

 

 

 

 

風船乘りの夢

                       萩原朔太郎
                       

夏草のしげる叢(くさむら)から

ふはりふはりと天上さして昇りゆく風船よ

籠には舊暦の暦をのせ

はるか地球の子午線を越えて吹かれ行かうよ。

ばうばうとした虚無の中を

雲はさびしげにながれて行き

草地も見えず 記憶の時計もぜんまいがとまつてしまつた。

どこをめあてに翔けるのだらう!

さうして酒瓶の底は虚しくなり

酔ひどれの見る美麗な幻覺(まぼろし)も消えてしまつた。

しだいに下界の陸地をはなれ

愁ひや雲やに吹きながされて

知覺もおよばぬ眞空圏内にまぎれ行かうよ。

この瓦斯體もてふくらんだ氣球のやうに

ふしぎにさびしい宇宙のはてを

友だちもなく ふはりふはりと昇つて行かうよ。

 

 

                     『定本青猫』