空を飛びたい!
雲を、空を、飛んでいたい!!
そんな思いを一度や二度いだいたことは
誰にもあるのではないでしょうか。
そんな3人が1930年代にいました。
サン・テグジュペリ、
堀越二郎、
萩原朔太郎。
その三人の展覧会「ふはりふはりと昇ってゆこうよ」
前橋文学館 オープンギャラリーで催されています。
飛行機乗りと風船乗り「ふはりふはりと昇つて行かうよ。」−−サン=テグジュペリ・堀越二郎・萩原朔太郎|前橋文学館 (maebashibungakukan.jp)
風船乘りの夢
萩原朔太郎
夏草のしげる叢(くさむら)から
ふはりふはりと天上さして昇りゆく風船よ
籠には舊暦の暦をのせ
はるか地球の子午線を越えて吹かれ行かうよ。
ばうばうとした虚無の中を
雲はさびしげにながれて行き
草地も見えず 記憶の時計もぜんまいがとまつてしまつた。
どこをめあてに翔けるのだらう!
さうして酒瓶の底は虚しくなり
酔ひどれの見る美麗な幻覺(まぼろし)も消えてしまつた。
しだいに下界の陸地をはなれ
愁ひや雲やに吹きながされて
知覺もおよばぬ眞空圏内にまぎれ行かうよ。
この瓦斯體もてふくらんだ氣球のやうに
ふしぎにさびしい宇宙のはてを
友だちもなく ふはりふはりと昇つて行かうよ。
『定本青猫』