舞台を観るとはなにか 渡辺保『舞台を観る眼』 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渡辺 保『舞台を観る眼』角川学芸出版 2008年刊

 

 

この方は演劇評論家の第一人者

 

その著者のエッセー集。

 

 

白洲正子、三島由紀夫、折口信夫を軸として

 

その間におもに90年代の歌舞伎、新劇、ミュージカル、ダンスの劇評を置く。

 

 

その熟達された、研ぎ澄まされた<眼>で観られた

 

舞台、芸術、人が明晰な文で書かれて。

 

 

<舞台を観るとは目にみえないもの――

 

今、目の前に開けている景色の向こう側にひろがるものを、

 

どう言語化するか、その戦い>だと。

 

 

なかでも「白洲正子」に惹きつけられた。

 

白洲の<目>がどのように<能>をとらえ、

 

梅若実(うめわかみのる)や友枝喜久夫(ともえだきくお)を観ていたか。

 

<骨董>、<人>をめぐり渡辺保はこう言う。

 

「白洲正子の日常の生き方そのものがそのまま文体の感覚になる。

 

白洲正子の存在自体が作品である」と。

 

「弛まずに自分の率直さ、きびしさそういうものを保持していかねばならない。

 

なんの装飾もなく、無駄なものもなく、すべてが洗い流されて、

 

どう動かしようもないものだけがさん然と輝く」

 

そして白洲は「自然のように自分の生きる姿をそこに映す。

 

そこに自分と文章の一体化があり、離れがたい趣がみえる。」

 

 

こう書く渡辺の筆も一分のスキもない。

 

 

白洲正子『お能』をふたたび読まねば・・・

 

 

 

◆目次

 

1 白洲正子の思い出
     白洲正子恐怖症
     白洲正子と能
     白洲正子旅日記


2 舞台の精神と身体
     「もの」への執着
     国家を殺す女
     回想にすがる女
     批評の力
     ベジャールの日本論〈他〉


3 戯曲の深奥
     タテことば―三島由紀夫の戯曲
     小町とルネ―三島由紀夫の変身譚
     もう一つの方法論―久保田万太郎の戯曲


4 批評家の視座
     定紋の椀
     豊竹山城少掾
     清水雅さん
     S/N
     試写室の涙〈他〉


5 折口信夫という存在
     劇評家・折口信夫
     折口信夫の陰謀