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『月と書く』は池田澄子さんの第八句集。332句。
読売文学賞受賞・現代俳句協会賞の句集『此処』から3年。
この3年、世界は激変し、コロナ禍で、人が人に逢えなくなった。
さらにロシアのウクライナ侵攻で、戦火が広がってゆく。- そのおりおりの心情、その芯にある怒りや思いを俳句に。
- やわらかで、しなやか、そしてその言葉は勁い。
- 表題はこの句から。
- 逢いたいと書いてはならぬ月と書く 澄子
◆「栞」には池田澄子さんはこのように書かれて。
お久しぶり!と手を握ったわ過去の秋
逢いたい人に
逢えて、
あぁ世の中に
戦争などない暮らしに
戻らないことには、
人心地がしない。
人類よ、地球を壊さないで、
と、またも心から、
どうしても思ってしまっている。
◆好きな句を(たくさんあって、もう絞り切れない・・・)
蝶よ川の向こうの蝶は邪魔ですか- 春寒き街を焼くとは人を焼く
焼き尽くさば消ゆる戦火や霾晦
水澄むと書くとワタクシ澄んでしまう
逢いたいと書いてはならぬ月と書く- 逢いたしと切に素秋の夜風かな
- 逢う前の髪を手櫛の涼しさよ
- 健やかなれ我を朋とす夜の蜘蛛
蛇の尾の筋肉質の喜怒と愛- 狭霧隠れの家々人々亡き人々
風の便りと風聞草をこの世かな- 凍蝶の自愛の翅のたたみよう
- はるかぜと声にだしたりして体
鷹化して鳩となるなら我は樹に- 装幀:水戸部功
◆池田澄子(いけだ すみこ)
1936 年 3月 25 日、鎌倉に生まれ、新潟で育つ。
30 歳代後半に俳句に出会い、1975 年「群島」入会のち同人。
主宰・堀井鶏逝去により「群島」終刊。
1983 年より三橋敏雄に私淑、のち師事。
「俳句評論」を経て「面」「未定」「船団」「豈」入会。
2001 年 12 月 1 日、三橋敏雄逝去。
2021 年、俳現代句大賞受賞。
現在、「豈」「トイ」同人。
句集『空の庭』(現代俳句協会賞)- 『いつしか人に生まれて』『ゆく船』
『現代俳句文庫 29・池田澄子句集』 - 『たましいの話』(宗左近俳句大賞)『拝復』『思ってます』
『此処』(読売文学賞 詩歌俳句賞、俳句四季大賞)
対談集『金子兜太×池田澄子 兜太百句を読む』
- 『あさがや草紙』『休むに似たり』
『シリーズ自句自解 1 ・ベスト100 池田澄子』
『三橋敏雄の百句』『本当は逢いたし』