妖かしの芝居国 赤江瀑「星踊る綺羅の鳴く川」 | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤江瀑『星踊る綺羅の鳴く川』2000年刊 講談社

 

 

ひさしぶりに手に取った赤江瀑。

 

その衝撃的デビュー作「ニジンスキーの手」から、

 

どの作品もほぼ読んできた作家。

 

 

暗黒の深海のような闇にうかぶ柩。

 

中空に浮かぶ柩の中身は鶴屋南北の亡骸か!?

 

というこの物語は


「数百年の時を隔てて、幻と現つ、ふたつの芝居の国の間に、


束の間、回廊が拓かれ、きらびやかに、冷ややかに、


精霊たちの宴が繰り広げられる。


鯉の腹の中眠りから、光に封じこめられた魔界が出現する...。」

 

と、紹介にある。

 

 

江戸の芝居の太夫たち、

 

そこに現代の女優らがこの魔界を探し、訪ねてからむ。

 

言の葉がひるがえり、

 

魔がゆきかう。

 

さながら戯場国の幕内、舞台の内外。

 

 

ストーリーをたどるというより、

 

科白、台詞がみだれ飛び、

 

そのセリフがなんとも粋で伝法で綺羅綺羅しい。

 

「おぼろ霞に雪洞(ぼんぼり)つらねた𠮷原桜の仲町も、

 

いやさあの木挽町(こびきちょう)、堺町やら、葺屋町(ふきやちょう)の、

 

押すな押すなの人の花、色ぞめきに匂い立つ芝居桜の賑わいも、

 

ここを先途のいま花ざかり・・・」

 

 

「弥生櫓(やよいやぐら)の太鼓が、ソレ鳴る、ソレ打つ、

 

ソレソレ遠音が弾む・・・」

 

 

きらびやかな鯉が大暗黒に舞う、

 

装幀は横尾忠則

 

 

◆赤江瀑1933年下関生まれ。

1970年『ニジンスキーの手』で小説現代新人賞、

74年『オイディプスの刃』で角川小説賞、

84年『海峡』『八雲が殺した』で泉鏡花文学賞を受賞。

 

著書に『獣林寺妖変』『罪喰い』『金環食の影飾り』『春泥歌』『花酔い』

『妖精たちの回廊』『ガラ』『香草の船』『弄月記』『霧ホテル』など多数。

また京都小説集『風幻』『夢跡』、山陰山陽小説集『飛花』、

エッセイ集に『オルフェの水鏡』『戯場国の森の眺め』などがある。