ラヴェル「こどもと魔法」、
ひさしぶりに録画を観ました。
小澤征爾さんが大病を克服された2013年、
サイトウキネン・フェスティバル松本の
ドキュメンタリー。
そのなかに「こどもと魔法」
50分のオペラの公演がありました。
このこどもをイザベル・レナートが演じ、
ポロシャツで半ズボン、
顔にはそばかすがいっぱい。
あのメトロポリタンオペラの美貌のメゾソプラノとは
一瞬、気がつきませんでした(苦笑)。
◆2013年のブログはこちら
NHK・BS深夜、小澤征爾のドキュメンタリーの放映。
2013年のサイトウキネン・フェスティバル松本での
オペラを始めとして、若手の指揮者への指導、
子供たちへの稽古、
各プログラムの本番などを
記録したもの。
生の小澤征爾の<現在(いま)>があった。
顔色も良くなって、
少々痩せてはいらっしゃいましたが、
稽古での様子はエネルギッシュ。
よかった、ほんとうによかった♪
オペラはラヴェル「こどもと魔法」。
50分と短い作品だが、しかけがいっぱい。
じつに良く出来ている。
ローラン・ペリーの演出、美術がとても詩的。
このオペラ公演の紹介は読売新聞2013年9月10日を以下に。
画像はフェスティバルのホームページより。
今年で22回を数えるサイトウ・キネン・フェスティバル松本。
目玉となる小澤征爾は長期の体調不良で登場が危ぶまれたが、
このたびラヴェルの「こどもと魔法」で指揮台に立ち、
みごと復活の兆しをみせた。
このオペラ、規模は小さいものの、内容は盛りだくさん。
こらえ性のない子供が傷つけた家具や食器、
それに動物や植物がとっかえひっかえ姿を現しては、
非難の言葉を子供に浴びせかける。
ロラン・ペリーの演出は、
この多彩な具材をあざやかな手つきでさばき、
しゃれた小皿料理の数々を出してくる。
着ぐるみのあいだから生身の肉体が透けて見える
大胆な衣裳いしょうや、上下左右、
いとも自在にゆらめいて子供を威嚇する暖炉の炎など、
まこと贅ぜいをつくした舞台だ。
どこを切り取ってもよいのだが、
たとえばティーポット(ジャン=ポール・フーシェクール)と
中国茶碗ちゃわん(イヴォンヌ・ネフ)のグロテスクにして
滑稽なデュエット。
このジャズふうの角張った楽想があるからこそ、
お姫様(アナ・クリスティ)がお話を壊されてしまったと嘆く、
あのしっとりした情景が際立つというものである。
つづく子供ひとりの場面を導き出すのはヴァイオリンの
思い切って絞り込んだ弱奏。
なるほど、この息を呑のむような瞬間こそ
小澤の小澤たるゆえんなのだろう。
(音楽評論家 三宅幸夫)
――8月28日、松本・まつもと市民芸術館。