玉三郎のお岩、
仁左衛門の伊右衛門、
「東海道四谷怪談」を録画で観ました。
2021年9月の歌舞伎座公演。
玉三郎のお岩、その哀切さがたまらない。
病み衰えて、なおその病身で
薬を飲むために下手へ白湯を汲みに、
ゆっくりと行く、その歩くのさえ美いこと。
この薬を伊藤家に感謝し、飲むその所作のていねいなこと。
宅悦に後ろから抱き抱えられながら、
無残に変わってしまった顔を無理に鏡を見せられ、
「これが私の顔かえなぁ・・・」が、あまりにも切ない。
仁左衛門の民谷伊右衛門の色悪が
ぞぞっとするほど素晴らしい。
幕開き、片襷きで唐傘を張ってる風情。
もうここで<伊右衛門>がいる。
ぎょろっと目を動かす、
その眼のなんと凄みのあることか。
お岩の顔の変わったのに驚きながらも、
終始お岩を見ないようにしている。
お岩の上着を剥ぎ取り、蚊帳までも質草にする、
その無情なこと。
隠亡堀の「首が飛んでも」の見得が大きいこと。
直助権兵衛は松緑。
お梅は千之助、ういういしい。
四世鶴屋南北 作
東海道四谷怪談(とうかいどうよつやかいだん)
四谷町伊右衛門浪宅の場
伊藤喜兵衛内の場
元の浪宅の場
本所砂村隠亡堀の場
お岩/お花:坂東玉三郎
直助権兵衛:尾上松緑
小仏小平/佐藤与茂七:中村橋之助
お梅:片岡千之助
按摩宅悦:片岡松之助
乳母おまき:中村歌女之丞
伊藤喜兵衛:片岡亀蔵
後家お弓:市村萬次郎
民谷伊右衛門:片岡仁左衛門