藤倉大作曲「アルマゲドンの夢」
2020年11月の世界初演の公演を配信で観ました。
こちらから2月28日まで
アルマゲドンの夢(2020年11月上演)- 無料映像配信 | 新国立劇場 オペラ (jac.go.jp)
原作はSF作家H.G.ウェルズ(ハーバート・ジョージ・ウェルズ)の
「世界最終戦争の悪夢 A Dream of Armageddon」(1901年)。
ハリー・ロスの台本、
藤倉大が作曲したオペラ「アルマゲドンの夢」。
指揮:大野和士
東京フィルハーモニー交響楽団。
◆出演
ピーター・タンジッツ(クーパー・ヒードン)
セス・カリコ(フォートナム・ロスコー、ジョンソン・イーヴシャム)
ジェシカ・アゾーティ(ベラ・ロッジア)
加納悦子(インスペクター)
望月哲也(歌手、冷笑者)
長峰佑典(兵士)。
「TOKYO FM少年合唱団」のボーイソプラノ。
上演時間は約100分。
歌唱は英語。(配信は英語と日本語訳)
原作は20世紀初頭にかかれ、
第1次、第2次世界大戦を暗示し、
オペラの内容は現在ただいまの疫病禍、
そこから起こりうるアルマゲドン、
第3次世界大戦=世界最終戦争さえ感じさせる、
緊張感につらぬかれたオペラ。
いままでに二度観ましたが、
まだ咀嚼できずに考え続けています。
幕開きはアカペラの合唱で、
暗黒の中に歌が流れる。
「電車」の中で交わされる会話から始まり、
ここは現実。
ただ交わされる会話は「夢の中で殺された」というもの。
その「夢」の世界へ現実は侵略され、
海水浴を楽しむ市民だったクーパーと妻ベラは
独裁者とおぼしきジョンソンの
政治的支配の渦に飲み込まれ、
命を落とす。
ベラは射殺され、
クーパーは電車で死ぬ。
その<現実>だったはずの電車の乗客も屍になって。
「夢」が「現実」に、
「現実」が「夢」に侵略されてゆく・・・
幕切れはボーイソプラノの
「アルマゲドン、アルマゲドン・・・」と
エコーのように聞こえる合唱の
[アーメン」が響いて、
静寂の、寂寥のなかで際立ち、
突き刺さってくる・・・
美術、照明、鏡面などがじつに効果的で、
「夢」と「現実」の世界、
その領域を侵してゆくありようなど見事ではないでしょうか。
リディア・シュタイアー(演出)
バルバラ・エーネス(美術)
ウルズラ・クドルナ(衣装)
オラフ・ブレーゼ(照明)
クリストファー・コンデク(映像)。