藤沢周『世阿弥最後の花』、72歳でゆえなく佐渡に流謫となった世阿弥は・・・ | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藤沢周『世阿弥最後の花』河出書房新社 2021年刊

 

 

七十二歳にして罪なくして流謫となった

 

世阿弥の晩年を描くこの小説。

 

実子元雅を毒殺で亡くし、

 

さらに佐渡に遠流となった世阿弥が、

 

いかにして「まことの花」、「最後の花」を

 

希求してゆくか。

 

 

章はあるときは元雅が、

 

朔之進(のちに剃髪し了隠)が、

 

世阿弥が、語る。

 

そうして能について、

 

自身の芸能への深い探求のあわいに

 

佐渡の童、たつ丸がなんともかわいい。

 

 

演能の場面はまさに圧巻。

 

狭められた視野にうかぶ生と死、

 

生者と死者とのおのずからなる交感が

 

圧倒的な筆致で紡がれる。

 

おりおりに挟まれる和歌が

 

さらにその心情や心象を深めて。

 

 

たっぷりとその小説の織りなす

 

幽玄な世界にただよいました。

 

 

 

本についてはこちら

 

世阿弥最後の花 :藤沢 周|河出書房新社 (kawade.co.jp)