大渡橋(おおわたりばし)は、
前橋市の市街から総社(今は前橋市)へゆく
利根川に架かる橋で、
日本百名橋に選ばれたとか。
左岸側には萩原朔太郎の詩碑、
右岸側には緑地がある。
1921年(大正10年)初代となる
大渡橋(長さ504m三連鋼曲弦トラス橋)が架けられ、
朔太郎の第四詩集『郷土望郷詩』に詩「大渡橋」が載る。
朔太郎は写真撮影にも熱心に取り組み、
この「トラス構造」の大渡橋の鉄骨をメインにした
仰角で撮っている写真がじつにモダン。
大渡橋
ここに長き橋の架したるは
かのさびしき惣社の村より 直ちよくとして前橋の町に通ずるならん。
われここを渡りて荒寥たる情緒の過ぐるを知れり
往くものは荷物を積み車に馬を曳きたり
あわただしき自轉車かな
われこの長き橋を渡るときに
薄暮の飢ゑたる感情は苦しくせり。
ああ故郷にありてゆかず
鹽のごとくにしみる憂患の痛みをつくせり
すでに孤獨の中に老いんとす
いかなれば今日の烈しき痛恨の怒りを語らん
いまわがまづしき書物を破り
過ぎゆく利根川の水にいつさいのものを捨てんとす。
われは狼のごとく飢ゑたり
しきりに欄干らんかんにすがりて齒を噛めども
せんかたなしや 涙のごときもの溢れ出で
頬ほにつたひ流れてやまず
ああ我れはもと卑陋なり。
往ゆくものは荷物を積みて馬を曳き
このすべて寒き日の 平野の空は暮れんとす。