朔太郎を朗読する<サマーコンサート>、無事に終わりました♪ | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サマーコンサート」高崎演奏家協会

お天気にも恵まれ、

無事に演奏会を終えることができました♪

体温チェックや連絡先を記入などは

 

もう慣れてきたのでしょうか、

とてもスムーズ。



客席はディスタンスをとって。

演奏も一組終わるごとに、消毒。

演奏者もスタッフも高崎演奏家協会の会員が

手分けをして運営しているコンサートです。


朔太郎の詩をお客様の前で朗読するのは

なんと1年7か月ぶり!?

緊張感、たっぷりでした(笑)。



この時節にお客様に来ていただき、

コンサートが出来たこと、しみじみ嬉しく、

感謝あるのみです。



朔太郎の「遺産」をどうぞ。

 

 

 

 





  

 遺伝



人家は地面にへたばつて


おほきな蜘蛛のやうに眠つてゐる。



さびしいまつ暗な自然の中で


動物は恐れにふるへ


なにかの夢魔におびやかされ


かなしく靑ざめて吠えてゐます。


  のをあある とをあある やわあ



もろこしの葉は風に吹かれて


さわさわと闇に鳴つている。



お聴き! しづかにして


道路の向ふて吠えてゐる


あれは犬の遠吠だよ。


  のをあある とをあある やわあ



 「犬は病んでゐるの? お母あさん。」


 「いいえ子供


犬は飢ゑてゐるのです。」



遠くの空の微光の方から


ふるへる物象のかげの方から


犬はかれらの敵を眺めた


遺伝の 本能の ふるいふるい記憶のはてに


あわれな先祖のすがたをかんじた。



犬のこころは恐れに靑ざめ


夜陰の道路にながく吠える。


のをあある とをあある やわああ



「犬は病んでゐるの? お母あさん。」


 「いいえ子供


犬は飢ゑてゐるのですよ。」