笈田ヨシ演出「蝶々夫人」、
4年前、2017年の今日。
笈田演出、バタフライが小刀をにぎりしめる、
そこで幕となります。
観たひとそれぞれが、
「自死」が「それとも・・・」と考える・・・
わたくしには<自害をしない「蝶々夫人」>が
じつに印象深く。
「蝶々夫人」ずいぶん観ましたし、
自分でも出演もしてきましたが、
すっくと立ちあがるバタフライは見事でした。
この時の会場の「群馬音楽センター」、
日本のモダニズム建築形成に大きな足跡を残した
アントニン・レーモンド氏によって設計されたこの建物は、
昭和36年に高崎市民の寄付金を基にして建てられた、
日本を代表する近代建築物。
現在は役目を終え、このホールは、閉館・・・
その日のブログをこちらに。
笈田ヨシ、演出のオペラ「蝶々夫人」を
高崎音楽センターで観る。
笈田ヨシはピ-ター・ブルックのもとでの
俳優、現在公開中の「沈黙」など国際的に活躍。
オペラの演出も手懸け、日本では初めての演出。
素晴らしい、熱気のこもった公演。
笈田「蝶々夫人」、
蝶々さんの「愛の悲劇」でなく、
「富める国と貧しい国の間にある問題を語った作品。
必死に自分の人生を掴みとろうとしたひとりの女性の、
非常に苦い、苦しい、辛い物語」と言う。
ピンカートンはまさに「富める強国の身勝手」な人物。
このピンカートン: ロレンツォ・デカーロ 、
ガタイが大きく(197センチとか!?)、まさにそのもの。
第二幕では3年経た、
貧しい(野良着のような衣装)家で、
「ある晴れた日」は歌われる。
蝶々さんは信じている、と歌うが・・・
蝶々さんの中嶋彰子、
スピントのソプラノがくっきりとドラマを刻む。
スズキの鳥木弥生、情がありながらも、
事実を見つめている、蝶々さんの同志のよう。
深い声が凛として、立ち姿も美しい。
初演版のようにケイトと直接会話をかわす場も。
シャープレスの ピーター・サヴィッジ、
アメリカの良心といった知的なバリトン。
ゴローの晴 雅彦、
いかにもぬけめのない女衒といったていで実に達者。
今回の公演、オーケストラの群馬交響楽団、
ミヒャエル・バルケの指揮で、熱い渦となって。
第一幕の愛の二重唱の夜の青い闇に、
灯される行灯がうつくしい。
本火がたかれて、情緒を高揚させる。
群馬バージョンでのサプライズというのはこのこと?
カーテンコールは満員の観客の
拍手がなりやまず・・・
◆演出:笈田ヨシ
◆蝶々夫人: 中嶋 彰子
ピンカートン:ロレンツォ・デカーロ
シャープレス ピーター・サヴィッジ
スズキ: 鳥木 弥生
ゴロー: 晴 雅彦
ケイト・ピンカートン: サラ・マクドナルド
◆指揮:ミヒャエル・バルケ
管弦楽:群馬交響楽団
合 唱:高崎オペラ合唱団
助演:ダンサー 松本響子
◆舞台美術:トム・シェンク
衣裳:アントワーヌ・クルック
照明:ルッツ・デッペ
音響:石丸耕一